風立ちぬ

作品は発表された時点で作者の手から離れ、鑑賞者のものとなる。
どのように解釈されても文句はいえない。
それが嫌なら誰にも見せないで手元に置いておけばいい。

宮崎駿のこの映画のパブリシティには度肝を抜かれた。
映画より長い3時間特番を組んで、「すごいよ〜、すごいよ〜、泣いちゃうよ〜」とやられるとどうにも脱力感で初日にダッシュという気にはならなくなる。
それでも娘が小さかった頃は一緒にダッシュしてたんだけどな。今、大学の試験期間中なんで「行けない」そうだ。つまんないの。 

しかし、あそこまでこうやって作った、ここが苦労した、ってやるかね。
私はパブリシティ番組の一部しか見ていないんだけど、それでも「ああ、ここはあの人がああいう風に頑張ったとこね」って映画見てる最中に余計なこと思い出しちゃうんだけど。

お金がかかっているから回収しなきゃ、ということくらいわかるが、作品の出来は別としてあんまりじゃないですかね。
電通博報堂両方がついているし、宮崎作品となればそれだけで視聴率が稼げるので「特番?何時間でもどうぞ!」となることは必然なんだろうけどさ。

そんなことで、少ししらける宮崎アニメであります。

この映画は「子供向けでなく、大人が見るもの」とちまたでは言われているようだけど、子供もいいんじゃないの。
お化けも怨霊も出てこないけど、かなりストレートな作りなんでちゃんと理解できると思いますが。

映画公開前に宮崎監督が憲法改正反対を雑誌で強く表明したので、反戦映画ととらえられる傾向があるようだけど、そうではない。精一杯あの時代を生きた人達へ捧げられた真っ直ぐな映画である。
時代が時代だけに当時の状況をさらりと入れ込んでいるが、そこに拘泥せず、「生きる」人間の背を優しく強く押してくれる。

あっさりと宮崎マジックに翻弄され、いつものようにボロボロ泣いていたが、観賞後はスッキリとした気分にさせてくれる引きずらない甘さを残している。

いろいろなご意見あると思いますが、私はそのようにこの映画を見ました。

あと、堀越二郎堀辰雄の他にトーマス・マンにも捧げた方がいいんじゃないかと思いました。

生きねば。
カントーベトナム