柔道日本

日記 個人的昔話

しかし、オリンピクってのはすごいね。
私のこんなブログにも影響が出てくる。風が吹けば桶屋が儲かるわけだ。
オリンピックの中継が始まる時間あたりからアクセス数が激減するぜ、ワイルドじゃないね。

だが、私もあーだこーだ言う立場にはない。
中継が始まると、どういうわけかテレビの前に構えてしまっている。
オリンピック、興味なかったんじゃないかなあ、と自分でも不思議なことが起こっていると首をひねるるのだが、柔道を見ていると全身硬直させて、「よしっ！」「一本だろう！」「かけ逃げだ、審判」とか声を上げているんですよ。おかしい。「柔道？ははん」のつもりだったのに。
真夜中まで緊張しているので疲れて困る。翌日仕事をする気になれない。

これはやはり柔道の経験があるからかもしれないな。
高校ではなぜか男子は柔道が必修で冬場になると柔道が始まる。
今、お聞きしたいのだが、なぜ冬にやってたのかね。冬の柔道場は凍えるくらい寒い。今は学校すべてが建て替えられて、すっかり綺麗になってしまったが、かつては獄舎のような趣で、風は吹きぬける、地震が来れば真っ先に倒れるという欠陥校だったんだけど。

柔道場は特にすごくて、拷問部屋にしか見えなかった。
何が辛いって、まず、足を畳みの上に乗せるとこからやばい。畳が凍っているわけはないのだが、感覚からすれば氷の上に立っているようなもんだ。歩けないよ。つま先でピョンピョン跳ねる白いウサギの集団。身体が冷え切っているからいくら準備運動しても危ないんだよ。高校生はみんな痩せているんで、骨折るよ。
私なんて当時から１７７センチあったけど６０キロに満たなかったので、マッチ棒が柔道着着て男同士でフォークダンス踊っているようなもんだ。みんな嫌なんだよ。

おまけに私は皆さんが驚くくらい足が長い。マッチ棒がポキンと折れるようにすぐに倒されてしまう。投げられるのも嫌なので、腰を引いていると鬼が「ちゃんと組まんか！」と怒鳴る。
乱取りをしている時は相手と申し合わせて、フォークダンスなのだが、鬼の前で試合をやらされてるときにはごまかしが効かない。軽い、力はない、足は長い、で勝てるわけないじゃん。一度も人を投げるような奇跡は起こらなかった。まあ、投げられてもいい加減なんでダメージはないが、格好悪い。一度くらいは一本背負い決めてやりたかったけど、そんな夢のようなことはなかったな。

高校の授業から開放されて、あんな思いは二度としなくてすむと安心していたら、とんでもないことが待っていた。東海大からスカウトが来たのだ、と話をいくら面白くしようとしてもこれは無理があるな。そうではなくて、大学入学時のオリエンテーリング資料をよく見ると、必修で「柔道」と書いてある。
私は文学部でありますので、かようなものとは縁がないはずなんですが、と訴えに行くところも見つからず、気が付くと今度はあっつい時期に柔道着を身につけていた。

そうはいっても、文学部だよ、柔道本気でやるか、と呑気に「おら！」とか面白がって声を出していたら、普段はメガネをかけた口数の少ないがっちりした体格の男が寄って来て「組もう」と言う。
よし、よく私の意図するところを組んでくれた。うまいことやろうぜ、と話しかけようとしたら、目眩がした。目眩がしたと思ったら、全身に凄まじい衝撃が。

お前なあ、と立ち上がりながら抗議しようとしたら、また月面宙返りだ。
ほんの十分位のものだったはずだが、何度私は華麗な舞いを見せたろうか。もう立てないとしゃがみこんでいても奴は無理やり私を引きずり上げ、やりたい放題。こんな無法が許されるものだろうか。
投げられる人間は力を使わないように思うかもしれないが、これが不思議と体力を消耗する。何にもしてないのに汗だくってのはどうしてだ。

私は文武両道なんて全然思っていないのに、どうなんだよ。文学部だろう。以心伝心で行けないのかね君は。私は以心伝心という便利な座右の銘を持っているので、目が合っただけで一杯行くか、とすぐに話が決まるのに。不自由してるんじゃないか。飲んで、すべてを水に流してこれからは気持ちよくフォークダンスを踊ろうじゃないか、とはとても言えず、それからも見事な舞いを皆さんにご披露していた。

そんなこともあるので、オリンピック柔道を見ていると歯がゆくて仕方がない。
なんだあの腰を引いて、組み合わないだらしない取り口は。柔道家ならしっかり組んで、柔よく剛を制せよ。背中掴んでぐるぐる回るようなみっともない真似はすぐにやめたまえ。
私は練習の時だけだけど、払い腰が得意だった。気持ちがいいぞ。相手が受身でバン！と畳を叩いてくれるとすごく強くなったような気がする。
やはり有効、技ありなんてのはつまらん。柔道には一本以外いらない。

日本人の柔道は見ていて気持ちがいい。
一本を綺麗に決めてくれるから、爽快だ。

でも、もしかして、綺麗に決めようとするから、もう一歩ということになっているんでしょうか。
それでもいいや、日本の柔道を見せてくれ。
以前書いたこと全部撤回して、力いっぱい応援するから。

全然関係ないけど、下関唐戸市場で撮りました。