下関レポート その5 実家におけるポルターガイスト現象についての考察、の続き

実家から帰ってきたら、「あーんな区切りのいい終わり方でカーソルが動かなくなった、なんちゅーのは通らないんじゃないの」と人を信じることができなくなったかわいそうな人がいたが、本当なんだから仕方がない。

文章の途中で終わってしまったままアップするのだけは避けたくて、何度も「コンニャロ、コンニャロ」とクリックしていると、一文字だけ青く変わるので消去する。するとそこから一行は書けたのである。改行をするとまたカーソルが消えてしまい同じことを繰り返す。どえらい時間をかけてあそこにまで至ったわけなのよ。救われるかどうか知らないが、信じなさい。

あれは多分たまたま機械の調子が悪かっただけだと思うが、まだ戻ってきてからは試していない。
まだ同じ状態だったらPC叩き割っちゃうかも。

本題に戻ろう。
実家に戻った日から、なにやら物音がする。
田舎の一軒家なんで、広くてどこかがきしむのは致し方ない。そんなことには慣れているのだが、一人のせいか妙に気になる。特に布団に入って電気を消すと、あちこちからおかしな音が聞こえてくる。
こんな何も置いていない家に忍び込んでも何もねーぞ。
一発ガツンとかましとかないとな。

「オラー!誰かおるんやろーが。出てこんかい。ふざけんなよ。出てこいっちゅーとるやろうが」
と大声で家中をまわったのだが、シーンとしたまま。
本当に出てこられたら腰抜かしてたと思うんだけどさ。
そんなことが何度もあったのだが、なんせ毎日ベロベロに酔っ払って帰るので、ゴロリンチョ、と寝てしまうことが多く、何にも気にならなくなっていた。

萩から帰ってきたその日は、飲みすぎの胃と肝臓を休めてやるため、近くのオンボロ食堂で心が冷え込むような親子丼を食べて、早々に寝てしまおうと布団に入りました。
そしたらだ。天井の一部でゴトゴト音がすると思ったら、家中の屋根裏を何者かがすごい勢いで暴走を始めた。

この家には何かが憑いている。
「六根清浄、六根清浄、エイ!」とやってみたが、これは全然違うことに気が付き、「怨敵退散、怨敵退散、エイ!」とやってみた。こっちはまあまあいいんじゃないかしら。
しかし、いっこうにポルターガイスト現象は収まらない。
そんなことをしていると私の身体が宙に浮き、海老ゾルことになった、というのはまた今度の時はあるかもね、というわけで天井裏では大運動会が催されつつも、私は不覚にも寝てしまった。

翌朝、またガタガタ始まったんで、「なんなんだよ、おやじ、いるんなら出て来いよ。朝から酒でも飲むか?」と誘ってみたら、天井の端がガタガタ音を立てたかと思ったら、急に静かになった。
おかしいな、と庭を覗いてみたら、そこには黄色い小動物の姿が、うーん、イタチかな。

イタチには苦い思い出がある。
小学校から中学にかけて私は鳩を飼っていたのだが、がっちり止めてある金網を無理やりこじ開けてイタチが鳩小屋に侵入し鳩を掻っ攫っていくのである。そのときの鳩が騒ぐ音は今でも頭にこびりついていて忘れられない。飛び出してイタチをリンチにかけてやろうとするのだが、見えたとしても駆けていく後姿だけ。
事件があるたびに金網を強く、さらに強く補強していくのだが、イタチってどういうテクニックを持っているのか、必ず侵入してくる。で、全ての鳩がやられてしまった。
私のイタチ憎悪はそんなわけで非常に激しい。

しかし、イタチってあんなだっけかな。
見ようによっては、少し太ったフェレットにも近い。
こいつだ。こいつが天井裏運動会の参加者であった。
なんで天井裏でやんだよ。
もっと広々としたところがあるでしょ、森の中とか、まあ庭でもいいや。
狭いところがいいのかね。
眺めていたら下水口にスルスルと入っていった。

おやじ、あんたじゃなかったね。
疑って悪かった。
線香上げとこう。
父親が自宅で仏壇に手を合わせる姿なんか一度も見たことなかったけど、俺はやっといたからな。
貸しひとつということで。

庭には婆さんが作った置物がいろいろ隠してある。
婆さんは脳溢血で右半身不随となったのだが、絵と焼き物はとんでもなくうまくて、右手が使えなくなってからは左手で同じことをやり始めた。
こんなんです。こういうものがあるから小動物もよってくるんだろうか。