選挙速報を見る会

本日はお天気もよく選挙日和でございます。
投票行ってね。

選挙当日となるとテレビは静かなもんだな。
長生きおばあさんの元気の秘訣みたいなことやってるよ。

そんなわけで、今日はイギリスの選挙の思い出を。

私は90年から97年までロンドンにいたのだが、2回下院の選挙を体験した。
体験と申しましても、選挙権ないんで「ほーほー」とテレビで様子を見ていただけでございます。
どこでも言われることなんでご存知かと思いますが、あちらでは選挙カーが町中を走り回って「もう一歩です。頑張ります。力をください。ありがとうございます」と犬に手を振るようなことは全くない。
商店街を走り回って子供と握手して「お母さんによろしくね」とお願いすることもない。

テレビ討論会、町でのリアルな討論会、戸別訪問でじっくり政策を説明し、疑問に答えるということをやっている。
うるさいと落とされるんですよ。
普通の感覚では、あんな選挙カーで政策も何も言わずに、候補者の名前を連呼されると絶対に落としてやろうという気になると思うんだけど、どうなの。やっぱり日本じゃやったほうがいいのかしら。誰か科学的にあれやんないと落ちるという研究をするとかなり面白い結果が出るんじゃないかと思いますが。

せっかく小選挙区になったんだから、何度でも公開討論会やればいいのに。
質問も受け付けるようにすれば、「こいつは何にも考えてない」とか「元気がとりえだな」とか「ゴマすりやろうだ」とか色々わかるじゃない。若い人たちも「どうなってんだよ」と候補者を問い詰めてもいいんですよ、ということになれば行き場のない焦燥感をぶつけることができるんで投票率も上がるんじゃないかと思うんだけど。
でも、やんないよね。ボロが出るのが怖いんだろうな。
日本の選挙じゃ争点が不明どころか、誰が何言ってんだかよくわかりませんよ。「いいことだけの総選挙」だもんな。世の中いいことだけなんてことはないんだよ。

日本にスライドしていました。

イギリスの選挙は基本的には木曜日。
日曜は安息日だから本来何もしちゃいけないんだよ。
イギリスという国はおかしな国で、ヘンリー8世はもともと熱心なカトリック信者だったんだけど、離婚を認めないことに腹を立ててカトリックから離脱しちゃって、イングランド国教会なんてものをこしらえちゃったわけだ。なんとなくカトリックと喧嘩別れした感じがあるんでプロテスタントというイメージがあるんだけど、実際の儀礼等はカトリックに近いんだよーん。
そんな国なんで、アメリカのバイブルベルトの教会で涙流して歌を歌っている方々とは全く宗教に対する姿勢が違う。どこかの時点で「どうでもいいや」になってしまったようでございます。「教会?行ったことない」という方々が誠に多い。特に都市部ではそう。

しかし、スコットランドの奥地に行くとびっくりすることがある。
日曜は安息日なんで仕事は一切してはならない。休むことしかしちゃだめ。レジャーも許さん。釣り、ダメに決まってんじゃん。読書もダメだよ、と30年前にロケに行った時に聞いて、1日無駄になっちゃったよ、ということがあった。今はどうなのか知らないけど。
そんなこともきっと理由のひとつだと思うが、日曜に選挙はない。

92年はサッチャーの後を受け継いだジョン・メイジャーという一見ボーっとしたおじさんが保守党政権を守ったが、97年5月の選挙ではサッチャーも絶賛した労働党トニー・ブレアが政権を奪った。
ジョン・メイジャーの何が問題だったか、ということではなくおじさんに飽きちゃったんだね、みんな、ということで一件落着という報道でございました。

その97年の選挙の日、開票速報をみんなで見る会をやるからお前も来い、と誘われた。投票締め切り時刻が10時なんでその前から酒飲んで、開票を仲間内で見て、前回の選挙と比較して、投票行動がどう変わったかとか、あそこは誰だな、とかで盛り上がるんだそうだ。テレビでもしきりと前回保守党はここまで取ったが、今回は、と振り子のようなグラフを見せながら解説していく。
日本のように開票一秒後にダレダレ当選確実、なんてことはない。
人口も日本の半分なので、小選挙区の結果は早いところでは11時には発表される。
この発表の様子が結構笑える。
候補者は基本的には選挙管理事務所に行かなくてはならない。
壇上に上げられて、結果発表をその場で聞かされる。
ボクシングの判定と非常に似ている。
過半数を取ったことがわかればすぐに飛び上がって喜ぶのだが、イギリスには自由民主党というのもあるので、どんでん返しを食うこともあるため、うかつに喜ぶと地獄に落ちることがある。
で、必ずどの選挙区にも泡沫候補がいて、そいつらはハロウィーンのような格好をして壇上で浮かれている。はなから議員になるつもりはないんだが、一応落選が確定すると悔しがる。それがまんざら演技でもないように見えるところがイギリスっぽい。

ということなのだが、選挙速報をみんなで見る会への出席は辞退させてもらった。
イギリス人が酒が入って政治の話を始めると、ただでさえついていくのがやっとなのに何を言っているんだかわからなくなるからである。7年いてわかってねーな、と思われるのが嫌で逃げたのである。
正しい選択だった。

本日は4時から宴会。選挙速報はどうなるんだろうか。

2階建てのバスから見下ろすオックスフォード・ストリート。この近くに会社があった。