師走の金曜日とタクシーと

昨晩は少し早めの忘年会、クリスマスパーティと老いも若きもドンチャン騒ぎを繰り広げられたのではないでしょうか。

私も銀座にて20年近く続いている勉強会のクリスマスパーティに参加しておりました。
たまたまクリスマスパーティと呼んでいるだけで、誰もサンタの格好してないし、みんなでジングルベルを歌ったわけではありません。忘年会と言ってしまうとこの歳になると淋しくなるからクリスマスパーティにしているだけなんだろうな。なぜかずっとそうだな。プレゼントの交換とかすればよかった。
でも、ああいうのって自分の欲しいものがまわって来ることってまずないね。
必ず「俺は現金のほうがよかった」とか言い出す奴がいるような気がする。

という感じで完全な忘年会モードでクリスマスパーティが催されました。
場所が超お勧めなんで紹介しときますね。

お結びカフェ
omusubicafe@iris.ocn.ne.jp

こちらは福井県のお酒、酒のつまみ、お結びのお店で雰囲気、お酒の種類、お料理、お値段、どれを取りましても文句の付けようがない、おじさんもお嬢さんも大満足するという世にも珍しいいいお店。
貸切でお願いしたら、11時半まで延々飲み放題、途中からもうこれ以上は食えないんだけどと戸惑うくらい、ご馳走が運ばれてくのよ。
蟹、残しちゃったよ。そんなことあり得るかな。お結びも結局腹一杯で食えなかった。
すごく得をしたんだけど、どこか損をした気分になるというのは始めての体験だ。
一度試してみてはいかがでしょう。

そんなわけで食いながら運ばれてくるシャンパン、ワイン、一升瓶を次々と空にしていたらすっかり出来上がっちゃって、「もう一軒」ということにならずに、帰宅の途についた。珍しくも気が大きくなってタクシーに乗っちゃった。

タクシーの中から見える銀座の光景は日頃目にするものとは全く違っていて、そこいらじゅうにグテングテンのおじさん、おばさん、青年、お嬢さんが肩組んで千鳥足。よく見ると4人で歩いているのは両端の二人は何とか正気を保っているんだけど、中のお嬢さん二人が今にもお尻を地面につけそうなご様子。若いっていいね。これからカラオケかな。
明日は土曜だ、朝までやってなさい。
ただ最近は意識不明になってそうな人間がいるとカラオケ店も入れてくれないことがあるそうですね。
ゲロぶち撒かれても困るということなんだろう。

「すごいですね、今日は」
「もう銀座中こんなですよ」
「みんなあんなになっちゃってるの」
「みんなです」
今年は嫌なことが多かったのかな。
日曜の選挙に嫌気がさしているのかな。
そんなわけで運転手さんと酔っ払い話になった。
とても感じのいいかたでした。

「しかし、あんなに酔っ払っちゃってたらタクシーに乗ってもわけわかんないでしょ」
「ひどいもんですよ。正気の人がついていてくれると安心なんだけど、寝ちゃうでしょ」
「寝る寝る」
「で、声をかけるんですよ」
「私もよく声かけられます」
「それですぐに起きてくれる人はいいんですよ」
「すぐに起きます」
嫌われたくないからじゃない。本当に私の場合は目が覚める。
「それだといいんですよ。完全に寝ちゃってると本当に困っちゃう」
「殴ればいいんじゃないですか」
「殴りません。真面目な話、触れないんですよ。揺すりたいんだけど、女性の場合は触っちゃいけないんです」
「なんで?」
「セクハラとかいうことになるんです」
「困るじゃないですか」
「困りますよ。男の場合は財布狙ったとかイチャモンつけられたりしますし」
世の中厄介な手合いが多い。
「で、何とか声かけで起こすでしょ、お客さんどちらですかって聞くと、100%『まっすぐ』って言うんですよ。必ず『まっすぐ』なんです。絶対に左だ、右だって言いません」
「言わなそうですね」
「しょうがないからまっすぐ走りながら声かけますよ。するとね、いきなりここはどこだってことになるんですよ」
あ、なんかそんなことが一度あったような。
「お客さんがまっすぐって言ったんですよ、って説明しても、金払わんって言い出すんです」
それは私にはない。ちゃんと「ごめんなさい」と言ってお支払いする。
「どうするんですか」
「交番にいくしかないですよ」
「そうですよね、一晩ぶち込んでやりゃいいんですよ」
そんな話の流れでゲロの話しになった。
「さっきいたようなベロベロの奴ら、ゲロ吐いたりしませんか」
「しますよ」
「すっごく困りますよね」
「困ります。下手すると二日間車使えなくなりますから。だからベテランの運転手はおかしいと思ったら、すぐ車止めて、ドア開けるんです。そうすると外で吐きますから」
「そんな鋭い人もいるんだ」
「せめて窓開けて首出して吐いてくれればいいんですよ。ホースで水掛りゃいいだけなんですから」
ああ、そんなことがあった。学生の時水谷が「気持ち悪うなった」って言うんで、真冬に窓全開にして頭出させて吐かせたな。運転手さんが気付かないように、一緒にいた森さんと大声で大学の応援歌歌ったな。早稲田のにしときゃよかった。
酔っ払った勢いで私は懺悔を始めていた。
「運転手さん、本当にごめんなさい。私一生に一度だけなんですが、車の中でゲロ吐いちゃったことがあるんです」
「みんな一生に一度はタクシーの中で吐くんですよ」
天使の運転手さん。明るい声で答えてくれた。
「30年位前なんですが、その時はクリーニング代をお支払いして許してもらいました。許してもらえることじゃないんだけど」
「みんなあるんですよ。いいんですよ」
「で、ですね寝て起きたとたんにグアッてくるんですよ」
とくだらない話をしようとしたら到着してしまった。

本当にいい運転手さんでよかった。私が吐いた時の人だったらこんなんじゃ済まなかったんじゃなかろうか。懺悔をさせてもらったおかげですごく気が楽になりました。
昨日はいい一日でした。
ありがとうございました。

ロンドンでそんなことしたらどんなことになるかわからないので、あちらでは一度もタクシーで寝たことも吐いたこともありません。