マリーゴールド・ホテルで会いましょう
インドに自分の探しの旅に出かける、という若い連中が30〜40年前は多くて、私にもそのきらいがあったことは否定できない。
ああいうわけのわかんないところで、一人、身を置いてみると確かになんやかんや考えるところは多くて、自分が発見できるような気がするものである。
でも、いい機会だとは思うけど、自分なんか見つかりませんよ。
面白いと思う人と帰りたいと思う人がいるだけですな。
若い人によく会う。
50半ばでバックパッカーやっている日本人にはなかなか会いません。
80歳になった母親に「インドに行ってみんか」と誘ったところ、「嫌」と世の中で一番短い答えが返ってきた。
そうね、大気汚染も問題になっているし、毎日カレー食わせていたら病気になるね。
老人に無理をさせてはいけない。
と思っていたんだけど、状況が変わるかもしれない。
平日の昼間に「マリーゴールドホテルで会いましょう」を見に行ったら、60歳以上1000円の特権を行使するご老人たちで満員だった。少し早めに行ったのにキップ売り場に行列ができている。
老人たちが主人公だから来ているのか、インドが舞台だから来ているのか定かではないが、ものすごい熱気。
7人の老イギリス人がさまざまな理由を抱え、ゴージャスなパンフレットに騙されて、ウキウキ気分でジャイプールにやってくるのだが、現実は・・、というお話である。
私から見ればこんな立派なホテルに泊まっちゃって、というくらい快適そうな宿なんだけど、最初は多分みんな引きますね。
インドは経済発展のまさに途上にあるが、変わるインドと変わらないインドが両方あって、見方によってはとんでもないインドが強調されることもある。実際あまりに悲惨な現実も厳然と存在するので、それを否定する気はまったくない。ただ、それはどんな国に行っても「ふざけんな」ということはあるもんで、インドの全てを否定すると、世界に住める所なんかなくなってしまう。
この映画はやや光の当たる場所に焦点を当てすぎと思うところもないではないが、どえりゃーうまいことできとる。これが何故アカデミー賞にノミネートされていないのか理解できない。コメディもちゃんと入れといて欲しいね。
7人の老人たちがどんな具合にインドという場所に自分の居場所を見つけていくのか、老人に感情移入できるというたぐいまれな映画である。
若い私でさえそうなんだから、御覧になったご老人たちの盛り上がり方はとんでもないのではないかと察します。
みんな「インド行くぞー」という気分で帰宅して息子や娘にたしなめられているんじゃなかろうか。
行かせてあげなさい。
生きているうちに好きなところで好きなことさせてあげてください。
いい歳して新しいことを発見するなんて凄いことじゃない。
いいことばかりじゃないと思うよ。
それでもいいじゃない。
嫌いになって帰ってくるかもしれない。
それもまた経験。
若者と老人はインドを目指せ。
まだまだ人生これからだ。
映画も見に行ってね。
いろんなことを保障します。