牛乳500mlが600億ドル

世界のどの国も財政は瀬戸際なのに、金融緩和大合戦がいまだ続いているので、どこがハイパーインフレを起こしてもおかしくないんだけど、1週間くらい前のAFP発の記事を読んで驚いた。
ジンバブエでは現在牛乳500mlが600億ジンバブエドルだそうです。
知らなかった私が馬鹿なのか、そんなことにしてしまった政府が馬鹿なのか、どっちも正解なんだろう。

かつてアフリカでは当然のように全ての国がヨーロッパ諸国の植民地、あるいは傀儡政権となっていた。この国ジンバブエももともと黒人が国を形成していたのだが、19世紀末に悪のオオダコ、イギリスのイギリス南アフリカ会社に統治されることになりました。国じゃなくて会社が統治するって当時の出鱈目さを象徴してますでしょう。
さすがにそれは塩梅が悪いと思ったのか、イギリス本国の植民地となりました。よかったね、じゃありえなくて、国土のほとんどは白人農場主の私有地とされてしまい、黒人は奴隷同然の扱い。先祖の墓参りさえ許されない状況。

1965年にローデシア共和国として独立しはしたが、これまでイギリス人だったイアン・スミスが首相になっただけで、何も中身は変わっておりません。独立したからには「内政干渉は受け付けない」という論理が通るから、とんでもない人種差別政策が引き続き実施されておりました。
南アフリカと似ていますな。

怒る黒人はゲリラ戦に臨んで激しい戦闘が起こったんだけど、途中からいい顔をし始めたイギリスの調停により、紛争は終結。1980年に現在も大統領であるムガベが首相となり、ようやくまともな国となりました。
その頃かな、ジンバブエ出身のゴルフプレーヤーが世界中で大活躍していたのは。

当初は黒人と白人融和政策を打ち出していて、うまくいくかもという期待があったんだけど、コンゴ内戦への関与等でグジャグジャになってしまい、その批判を避けるように2000年から白人農場主の持つ私有地を強制収用し、農場で働いていた黒人に再分配し始めました。
このあたりになると、覚えている皆さんも多いはずですね。

歴史的に見れば、この再分配は当然だろうと思えるのだけど、いきなり土地を奪われると「何なのこれは」と怒り心頭の白人だらけなわけである。20年もうまくやってきたつもりだもんね。
ところが土地を分配された黒人は農場経営のノウハウは全く持ちあわせてなくて、技術は失うし、経営はどん底にまで落ち込んでしまう。
そこに食糧危機が発生する。
こういうケースではとにかく紙幣さえ刷ればどうにかなると思っちゃう為政者が多い。
物がないところに紙幣だけジャブジャブ刷られるとインフレが起きるのは必至。
そんなわけで、2000年から10年間で2億3100万%というスーパーハイパーインフレーションが発生してしてしまう。
何がいくらなのか、数時間で変わってしまうというどうにもならない状態でございます。
だから、牛乳500mlが600億ジンバブエドルなんてことになる。

まあ、お金は信用を無くすとただの紙切れにしかならないから、表面上は600億ジンバブエドルなんてことになっているけど、誰もそんなものは使っていない。今では米ドルと南アフリカランドが流通していて、物が買えないという事態は避けられているが、自国通貨が使用不可能なんてのは、国として成立不可能である。

かつてアジアを旅していると、宿代は米ドルでしか受けとらないというところもあったが、今では経済成長に伴い、多分そういうケースはほとんどないと思います。米ドルでも払えますけど。

現在ジンバブエの国庫金は217米ドルだそうで、「なんにもできません」と財務相が記者会見で明らかにしました。「各国政府に資金援助を要請するしかない」ということであります。

歴史的経緯を考えると、どうにかしなければ、と思うが、一時的な援助で経済が再生できるわけがない。
どうしますか、と私一人ではどうしようもないことを考えてみたが、ここはもっと頭のいい人たちにお願いするしかないと当たり前の結論に達したのであります。
しかし、考えているうちにこの状況は遠いアフリカの国でしか起こりえない話ではないと震えがきた。
日本ではハイパーインフレーションが起こる可能性は絶対にないとおっしゃる方々もいるが、日本の財政は世界最悪、ガンガン紙幣を刷るべしとイケイケドンドンの行進が続いております。
株価が上がってるからいいじゃん、という割り切りのいい方もいるが、私は昔から悲観主義者なんだな。まともに経済学なんか勉強したことないんだけど、「おら、なんかおかしいと思う」くらいのことは感じる。

学者の皆さんは真反対のことを主張し、言い争っていらっしゃるが、そのこと事態「経済学」というのは学問ではないのではなかろうかと疑い始めている私である。

ちなみに私が何故ジンバブエにここまで反応するかと申しますと、小学2年生の時に「ローデシアが独立」という新聞記事を読んで、いいことが起きたね、と思い込み、学校で勝手に授業中に「しっちょるか」と知ったかぶり演説をしたら、その間の事情を理解している先生から「あの国はまだ独立したとは言えん」と一喝されたからでございます。網田先生といういい先生でした。ご健在です。

ルアンナムター、ラオス
こういうおばさんはラオスの通貨、キープしか受け取ってくれません。