大腸内視鏡検査 その2

昨日は10年前の話で終わってしまった。
今日は最後まで。

検査前はなんかいろいろやらされたなあ、というぼんやりとした記憶はあったのだが、肉体の実感を伴っていなかったので、「あれ、こんなに面倒だったかしら」と戸惑った。
前日は朝食は消化のいいもの。だから、バナナを一本食べた。
昼食は素うどん。
ほー、素うどんかね。素うどんってからにはうどん以外の食材が入ってちゃいかんのだろうと、茹でうどんを買って来て、自分で出汁とってうどんをぐつぐつ必要以上に茹でた。消化を良くしなきゃ。簡単なんだけど、鍋からどんぶりに移したらそれで終わり。ネギもわかめもイカゲソも天かすも入れず、そのまま食べた。
あれは不思議な食いもんだな。
単調なのよ。ただ真っ白なうどんだけを食べる。食べる。食べる。汁を飲む。飲む。飲む。終わり。
ふーんという感じで終わってしまった。

既に病気になったような気分。
力が入らないが、用事があったので出かけました。
食べたもののせいなのか、やたらおならが出て困りました。

夕食は早めに素うどん。
昼食と全く同じ要領で作って、同じように食べ終わる。
腹が減ってどんどん元気がなくなっていく。
お笑いの方が秘境に行って、おいしいものを食べるテレビ番組を見ていたら胃がキューとなって来た。
8時に下剤を4錠。
翌朝は6時から大量の液体下剤を飲まなきゃいけないので、5時半に起きるつもりが、夜飲んだ下剤で目が覚めて3時からトイレ通い。そのまま寝られず、交換日記の話をトイレを往復しながら書いていた。
6時から1時間のうちに1.8リットルのポカリスエットのような味の下剤をガブガブ飲む。
何にも起こんないね、と甘くみていたら、突然それが襲って来た。
3分から5分おきにトイレにダッシュする。
その威力に震えたね。

体に力が入らない。
しかし、腹は減らない。うまいことできている。
検査は1時半からなのだ。
病人状態でひたすら自宅で横になっている。
眠気で朦朧としながら病院へ。

まず、胃カメラ
若い頃は七転八倒の苦しみを味わったが、歳を取ると異物に対する拒絶反応が薄くなるんで、」特にこれといったことなく終わってしまった。面白くなくてごめんなさい。

しかし、手際がいいのよ。看護婦さんたち。
こちらに一瞬の躊躇も許さない。はい、はい、はいと事が進んで行きます。
胃カメラが終われば少し休憩でも入るのかと思っていたら、そのまま「はい、横になってね。大倉さん少し眠くなるお薬入れますからね」。10年前エイリアンが腹の中を好き放題動いて、うげげげげ状態になったので、寝ているうちにすませてもらいたかったから、私の方からお願いしていました。
ところが、全然薬が効かないまま、お尻にまたドロリとしたものが塗られたと思ったら何やら違和感が。
あれ、と思う間もなく、不覚にもするすると侵入を許してしまっていた。
そんな体になってしまったのかと思ったのだが、あれずいぶん昔より細くなってないですか。時々「おげ」となることはあるけど、あっという間に「奥」に到達してしまっていた。そこまではしっかりとモニターを見ていたので覚えているのだが、いきなり目の焦点が合わなくなってきた。頭を上げてモニターを見ることができない。まぶたが開かない。全身が痺れてくる。体が重くてしょうがない。「じゃ、また横になってね」と看護婦さんに声をかけられても動けない。「はい、終わりましたよ」と終了を告げられても、声が聞こえるだけで、どうにも反応できない。
そこからは看護婦さんに抱きつきながらリクライニングシートまでなんとかたどり着いた。
座ると目が開けてられない。画面で見ていた私の大腸内部のイメージらしきものが閉じた瞼に次々と現れる。ピンクのトンネル。体は全く動かない。

これ臨死体験みたいね、くらい思えるのだが、こんなの初めて。ただ、聴覚だけはしっかりしていて周りの会話はすべて聞こえている。「チベット死者の書 バルド・トドル」にも死者は音だけは聞こえているとあったことを思い出した。
そうか、死の間際はこんな感じなんだな、と勝手に決めました。

そうこうしていたら、覚醒してきて目が開くようになり、体も少しずつ動くようになってきた。
するとお腹にじんわりと痛みがわいてきて、何やらが腸の中を駆け巡っている感じ。またエイリアンかよ、と不安になったが、痛みは増してくるばかり。なになに、聞いてないんだけど、と体をねじりながら我慢していたら、看護婦さんが同じ検査を終えた方に声をかけていた。「ガス出ましたか、あ、出ない、じゃ、お尻を上にしてガスが出るのを待ってましょうね」話しかけている。
そうか、ガスか、そうだよ、あんなに腸が丸く膨らんでいたのはガスを入れてたからなんじゃん。
じゃ、俺もガスを出すとするか、といろいろ踏ん張ってみたが、いつもは「トイレでするように」と再三にわたり警告を受けていうるにも関わらず、全くガス退出の気配がない。
自力で立てるようになってトイレに行き、しばらく座り込んでいたら、とんでもない量のガスが大音声とともに噴出した。一応解説しておきますが、これはおならじゃないからね。だから、臭いは全くない。ただ、いつまでたってもガスは凄まじい音を立てて出続けている。
こんなとこか、と思って着替えたのだが、腹だけポコリと出ている。
昨日からろくなもの食ってないんだから、へこんでて当然なんだが、腸内に挿入されたガスの量は半端ではなかったらしく、もう大丈夫と思っていたのに、またお腹が痛くなる。
お腹が痛くてまともに歩けないのを無理して帰宅。
トイレで家族と猫を震撼させる爆発音を立てて何度かガスを放出してようやく人心地ついた。

思うにですね、眠くなる薬を入れたのが間違いだった。
あれは体の動きも鈍くする。
あれやってなかったら自然にバスンバスンと音を立てながらも歩いて帰れたのに、薬が抜けるまでうまく対応できなかったのよ。
助言といたしましては、これから同様の検査をお受けになる皆さん、眠くなる薬はやんない方がいいですよ。
とにかくガスに苦しむことになる。
今回は体がきれいになったというすっきり感はなく、しばらく気持ちの悪い思いをした。

ま、そんなことで先週の検査週間は終了しました。
人間ドックに入るよりずっと徹底した検査が受けられました。
毎年は嫌だけど、フリーランスの方も定期的にこういうこと試してみるのもよろしいかと存じます。
大腸内視鏡検査は好きずきだな。
やみつきになる人もいるかもしれません。

目が開けられなかったときに見えたイメージに近いです。