特定秘密保護法とエドワード・スノーデン

ニューヨーク・タイムズが社説で「エドワード・スノーデンに恩赦を」と訴えているという記事を見て、実際の社説を読んでみたら、タイトルは「エドワード・スノーデン内部告発者」だった。

内部告発者」は英語では「WHISTLE-BLOWER」。直訳すれば「笛を吹く人」。
スポーツの審判がファウルの際に笛を吹くところから来ている。
ルールに沿っていないことをする人間がいれば笛を吹く。
スポーツ以外でも法律を犯すことをしている人間がいれば、それを知った際に笛を吹く。
内部告発をする。
それが政府内部であろうがなかろうが当然のことである。

エドワード・スノーデンは現在3つの容疑においてアメリカ政府から追われている。
二つのスパイ法違反、政府所有物の窃盗である。
オバマは自分が正しいことをしたと思うのであれば堂々とアメリカに戻り、裁判で戦えばいい、と呑気なことを言っているが、
そんなこと信じちゃいない。帰ってしまえば3つの容疑どころじゃない、どっさりさらに罪を盛られて終身刑になることはわかっているからである。
そんなわけでスノーデンはロシアに亡命中。
聞くところによればプーチンも持て余してしまって、いなくなってくんないかしら、と思っている様子。
そりゃそうだろ。
同じようなことで塀の中にぶち込んだ人間がたくさんいるんだから。

具体的に何をやったかは皆さんご存知の通りNSAが不法にアメリカの市民、世界中の要人の電話、メール、あらゆるプライベート情報をかき集めていたことを全部ばらしちゃった、ということである。
NSAがやっていたこと、これ違法です。

話がずれますが、NSAは情報機関で、こないだ安倍君が大喜びで法案通してすでに人をかき集めている日本版NSCとは違う組織であるけれど、そのうちこれもいるよねえ、と言い出しそうなものではある。

で、すでに二人の連邦判事はNSA憲法を犯していると非難している。
ニューヨーク・タイムズは丁寧に細かくスノーデンが暴露した内容の違法な点についても説明しているが、ここでは省く。

さて、一般的にアメリカでは「内部告発者」についてどう考えられているかだが、違法行為を告発した場合は「内部告発者」は報復から保護されなければならないとされている。
法廷でもそのように判断されるケースが多いのだが、そう簡単には行かないのはどの国でも同じで、政府関係者が「内部告発」を行った場合についてはややこしい。
2006年に同様の事件が起きたとき最高裁判事の判断はまっぷたつに割れてしまった。
国というのは原則をかくも簡単にひっくり返すのである。

ニューヨーク・タイムズ、そして英国のガーディアン紙(スノーデンの暴露をドーンと取り上げて英国政府から叩かれている)は司法取引をして、恩赦も実行すべきだと主張している。
アメリカの法律に詳しくない私が偉そうに言えないんだが、個人的には司法取引も恩赦も必要なく、違法行為を暴露した「内部告発者」として「逮捕しない。保護する」とアメリカ政府が宣言すればいいだけじゃないの、と考えてしまうのだが、これは大間違いだろうか。
恩赦とか言ってんじゃないよ。
「違法行為を行った連中を逮捕しろ」と追求すべきなんじゃないか。
実際にこれまでスノーデンの暴露で逮捕された人間は一人もいない。
憲法、法律は機能しているのか。

日本の特定秘密保護法ではさまざまな分野で特定秘密を指定することができるとしている。
アメリカと同じ。
特定秘密に指定されれば、その範囲内(範囲が恐ろしく明確ではないが)のことを漏洩した人間は処罰される。
それが国家を脅威にさらすと国家が認定すれば完全にアウトである。

アメリカはスノーデンが「国家を脅威にさらした」として各国に犯罪者引き渡しを求めていたが、スノーデンの告発でどんな脅威があったのか。
ニューヨーク・タイムズはこう指摘している。
「これまで誰もスノーデンの暴露によって、国家の安全に脅威を与えたという微かな証拠さえ提出していない」

よく考えていただきたい見本が現在進行中である。