永遠の僕たち

永遠という言葉は一時的にロマンティックな感情に溺れた時に「永遠にあなたを愛します」とか、それに便乗した「○○は永遠の輝き」という場合か、ニューエイジ系スピリチュアルの本くらいでしか見当たらないように思うのですが、いかがですかね。ユングの言う「集合的無意識」だって人類が滅亡したら消えちゃうんだから。
一神教の場合はあるか。天国で永遠に幸福に暮らせるとかね。仏教では基本的にはありません。色即是空だもん。
私は「永遠はない派」。
始まりがあれば終わりはあるって。宇宙だって終わりがありそうな雰囲気なんだから。

と書き始めて、私はこの映画を褒めるつもりだったのに、またいきなりぶちかましてしまったことに気がついた。この原題がいけないんです。原題の「Restless」は「不安な」「眠れない」「絶えず変化する」という意味なもんだから、どうしたってそのまま邦題にするわけにはいかない。
いや、「永遠の僕たち」はいいタイトルだと思う。

一時日本で流行った「余命いくばくもない恋人との愛の生活」的なパターン化されたストーリーは1970年に公開された「ある愛の詩」が原型になっている、と思う。小説が書かれてる最中から撮影が始まったこの映画は大ヒットしたのよ。フランシス・レイの曲にあとから無理やり歌詞を付け、アンディ・ウィリアムズが歌って、これも強引にヒットさせた、ある意味あざとい商売が周辺にうごめいた映画でした。
私は田舎の13歳のドンくさい中学生だったので、もうひとつ何がいいのかわからなかったんだけど。

「永遠の僕たち」は大筋だけ語ると、「そうか」ということになってしまうが、設定が意表を突いており、細かな描写が非常に大胆かつ繊細でいい本のページを一枚一枚丁寧に読み進むような印象。
加瀬亮が幽霊なんだけど、トリックスター的な意味合いで存在しているのではなく、寡黙な道先案内人のような存在で、好感が持てるなあ。
加瀬亮、すごく英語がうまいよ。吹き替えかと思ったくらいだもん。
意図したところかどうかはわからないが、ハイデガーの「人間は死へ向かう存在」であることを、わかりやすく情緒的に教えてくれる作品である。

ネパール、標高2100メートルのナガルコットで霧の夜明けに、ここがまるで黄泉の国の入り口のように感じた。明るい時はしょぼくれ、雑然とした花畑。