果てなき路

いきなり映画の世界に引きずり込まれる。

計算されつくして作られたのか、編集の勢いでこうなったのか。
どう考えても前者なのだが、そのトラップに引っかかると底なし沼に引きずり込まれるかのように、画面から目が離せなくなる。
幻惑される。

「幻惑」っていいねえ。
「目先をまどわすこと」としか辞書には書いていないけど、私の「幻惑」は少し違う。

高校生の頃、すごく好きな娘がいて、たまに目が合って、「もしかしたら、俺のこと、意識しているのかも」と勝手に思っていたら、廊下ですれ違っても彼女の目に私は入っていない。でも、恥ずかしがって、前しか見ないようにしてたのかも、と枕抱えて悶々とする馬鹿男子の妄想を引き起こす魅力のよなことを「幻惑」と致したい。
馬鹿男子はもちろん私のことで、好きな娘が私のことを見ていたなんて事は一切なかったのは当然のことだが、それがあるから、今こうやって「幻惑」に新たな意味を加えることができた。

この映画は全編、トラップと幻惑でできている。

まず、冒頭から流れる曲に日本語訳がついていて、それを読み始めたところから引っかかっている。普通歌詞に日本語つけんだろう。
筋を追って説明をするのは難しいし、しても意味がないが、デビッド・リンチの「マルホランド・ドライブ」や「インランド・エンパイア」のように、夢の中を漂っているような映画ではない。
夢現状態でないのに、この快感。もう一回見たい人には割引があるってのも、よく計算されている。

解釈は鑑賞者の自由です、と任せているようでかなりしっかり縛りを加えている。

エンドロールが終わるまで、席を立たないでいただきたい。
理由はその時にわかる。

原題は「ROAD TO NOWHERE」。

どこで撮ったんだか思い出せない。ロンドンだったような。