NOT IN MY BACK YARD SYNDROME

私なりの解釈を入れて訳すと「必要なのは分かってるけど、俺んちから一切係わり合いのない、どこなのか知らないくらい遠くに作ってくれ症候群」ですね。
私がアメリカにいた時に初めて聞いた記憶があったのだが、1980年にEmilie Travel Livezeyというイギリス人が作り出した、短くて胸に突き刺さる見事な言い回しである。

私の訳じゃ、うっとおしいだけですね。

なんだかよく理解できないもの、うるさいもの、危険な香りのするもの、なじみのないものなんかが対象になります。

欧米で言われているものを並べてみますよ。
なるほどと思うものから上げていきましょう。
化学工場、原子力発電所発電所風力発電施設、放射能処理施設、海水から塩を抜く処理施設、ゴミ埋め立て場、工業団地、軍事基地、携帯電話ネットワークタワー、高速道路、新しい道路、鉄道、空港、港。納得いくかどうかは別として、わからなくはない。
ほー、と思うのは学校、ゴルフコース、新興住宅、ユースホステル。こういうのも嫌なんだよ。「うるさくなるじゃん」ということなんだろう。向こうじゃわざわざありがたがってゴルフコースの中に住んでいる人達もいるんだけどな。
極端な例では車を何台も持っている連中が、「他の車は邪魔だから道路に出すな」と言っているのも上げてあるよ。

「そんなものはどこか他でやってくれ、俺は今のままで充分幸せなんだから」

そうだよなあ。自分が出したゴミはどこか知らないところでどうにかして欲しいでしょ。
大便、小便も即自宅外に流れていって欲しいね。どう処理するか、どこに行くのかわからないけど。
原発なんてもってのほか。
軍事施設なんてありえない。ジェット戦闘機が上空を飛ぶと爆弾が落ちたよな爆発音が響き渡るもん。戦争になったらまずミサイルで狙われるしね。

ねえ、ねえ、ねえ。

日本じゃ、葬儀場も住民の大反対集会やってるね。「俺が死んだ時もどこかわからないとこでやってくんねえ」ってこと?
「火葬場も嫌だよ。臭いじゃない。臭くないけど、人が焼かれるんだよ。俺はきっと臭くないし、綺麗な煙が上がるだろうから、俺のだけは自宅近くでいいけどさ」ってなことを言っているかどうか知らないが、「嫌なものは嫌」的なビラがベタベタ貼ってあるのを見たことがある。

さてと。
原発の問題は別の機会にまわすとして、日本で今典型的なこの症状が現れているのが沖縄だ。違う。ずっとこの症状を沖縄の他、アメリカ軍基地のある場所以外に住んでいる日本人は忘れたふりをしていた。自分のところに来ない限りはアメリカ軍に守ってもらっているから、基地は日本にあるのは当たり前と無意識のうちに納得していたわけだ。

普天間基地辺野古に移ろうが、地元の人は大変だねえ、で済んでいたわけだ。
鳩山友紀夫が「県外、国外」「やっぱなし」とわかんないことにしてしまって、「鳩山は阿呆だ」と思ったが、「じゃ、俺んとこに持ってきたらいいよ」とは誰も言わない。
「沖縄はアメリカのアジア戦略の超重要拠点だから、沖縄以外ないんですよ」とアメリカに守ってもらっているから仕方ない派の方々はものすごい剣幕でおっしゃる。
分散化して中国を包囲しておかないと、ということであちこちに海兵隊は散らばることになったが、それでも沖縄の海兵隊は1万人。守ってもらうには充分だ。

で、何を守ってもらうんだっけ。中国が日本にミサイルぶっ放した時、やっつけてくれんの?
アメリカの国債を大量に保有している国に仕返しをしてくれんの?
中国が日本を攻撃するかも、ってのは中国の誰が言ってんの?
尖閣列島で揉めたら攻撃してくんの?
もしかして北朝鮮
北朝鮮だと沖縄じゃないでしょ。作るんだったら新潟?私の実家のある下関も近いぜ。

「国を守る。私たちのかけがいのない故郷、家族を守る」泣けてくる言葉だ。先の大戦のときにも同じこと言ってたよな。でも今度はアメリカに守ってもらうんだ。重点的に沖縄で。

「NOT IN MY BACK YARD」。いい言葉だよね。これで全部OKみたいなことに日本はなってるし。

ふと思ったんだけど、日本人全員が「NOT IN MY BACK YARD」って思ってるんだったら、この際「日本人の総意でございますので、お引取り願います」っていうのはどう?

カンボジアには米軍基地ないんだよ。あたりまえだけど。
馬鹿でかくもありがたい観世音菩薩が54体もあるバイヨン。戦争がなくなりますようにと祈ってくれている。