尿酸値と中性脂肪と体重と

3ヶ月に一度権威ある病院で血液検査を受けている、受けさせられている。

何故そのようなことになったのか。
ロンドンにいる時だから、もう20年も前になるの?ビックリ!って話じゃなくて、会社から義務付けられた健康診断に日本人の医者のいる病院に行きました。
一通りの検査が終わって、結果を教えてもらいに診察室に入ると、医者から怒りのオーラがメラメラ立ち上っているのを確認した。あんとき一目散に逃げてりゃよかったんだよな。

「君はいくつ」
「36です」
「子供はいるの」
「一匹、できたばかりのが」
「娘さん?」
何の話だよ。
「そうです」
「あんた、娘さんの結婚式に出たくないのかね」
ここは警察?落としの山さん、登場か。
「あんた」はないだろ。
「このままだと死ぬよ」
「死にますか」
「絶対死ぬ」
こんな会話、医者とするかね。

検査結果がペラペラの紙に並んでいる。
そんな紙切れに俺は殺されはせんぞ。

数字の横にたくさんアスタリスクが付いている。何なの?
「この数字じゃ、10年もたんな」
この医者イギリス生活が長すぎて、日本語がおかしくなってんのか。

ガンマGTP、高いの知ってるよ。たくさん酒飲んでんだから。しかし、まあ、高いな。
中性脂肪、なにこれ?標準値がこれ?あっらー、なるほどね。なるほど、なるほど。死ぬかも。
尿酸値、これ見方が良くわかんないんだけど。痛風?ふんふん。痛いの?まずいね。あ、腎臓にもくる。

そのほかにもあれこれ言われたけど、もう忘れちゃったよ。

とにかくその3兄弟みたいな奴が許せんのだね。
「直しましょう」
「直せないよ」
「あんた医者でしょ」
「生活変えろ」
「変わんないよ。俺は広告屋だよ」
「じゃ、死ぬね」

つまんない話聞いちゃったよ。
酒うまくないよ。

その後、毎日泳ぐようになったが、泳ぐと酒と飯がうまい。
楽しい生活が帰ってきた。

ロンドンでの生活を終え、日本に帰ってきたら誰も健康診断受けろといわなくなったが、何でまた医者に行ったんだっけ。そうだ、背中が痛くなったんだ。何故痛くなったかは、面白い話になるので、別の機会にしよう。
そこでも、医者に顔をしわくちゃにして生活を改めろと迫られた。
私、どうも医者に大人気である。

こう見えてもね、俺は大学時代実家に戻った時に親父に血液検査されて「お前、何食ってんだ」って聞かれたんだぜ。コレステロールが全然足らなかったらしい。すごく痩せてたし。父親は精神科医だったけど、そんなことも分かるんだ、と思ったよ。

生活改善には努力はしたよ。でも努力と結果は時として一致しないんだね。
日本に帰って痛風が出たよ。別の病気で入院もしたよ。
あのロンドンの医者、うまいこと言ったなあ。

こりゃダメだ、ってんで医者がいろんな薬を出し始めた。もう10年くらい飲んでるか。
最初は全く薬飲んでも効き目がなかったのだが、ここにきて大幅に数字が下がってきた。もともと数字は数字で自覚症状とは関係なかったんだけど、すごく気分がいい。野菜食って、泳いで、酒があまり飲めなくなったからだろうか。
娘の結婚式には出られるかもしれないが、どういうわけか今度は順調に体重が増え始めている。泳ぎに行くたびに体重計に乗るのだが、実になだらかなカーブを描きながら増えている。
数字と体重の相関性はどうなっておるのかね。
医者には怖くて聞いていない。
きっと、「食べるから太るんです」って言うと思うな。

ロンドン時代はスペインによく出張で行った。うまいものばかり食っていた。