と思います。

本当に思っていて、「と思います」というのであれば何の問題もない。
あまり多用すると「思ってばかりだなこの野郎は」と思ってしまうことはあるんですけど。

テレビ、ラジオで話し手が、「ではこの方々の登場です。少女時代の皆さんに『タクシー』を歌っていただこうと思います」「では交通情報センターのヤシロさんに伝えていただこうと思います」とよくおっしゃる。

この「思います」は思ってないでしょ。「歌っていただきます」「伝えていただきます」で充分じゃないの。どうも段取りで次の話に移る時に意味もなく「思います」を入れてない?あれは癖なのか、台本にそう書いてあるのかわからないが、一度気になると病的にしつこく追及してしまう私にはとんでもないイライラの種になってしまった。

語尾に気をつけておくれよー。語尾がいつも同じだと聞いたり、読んだりしていると「イラッ」とくるんですよ。私を助けると思って、思ってないときの「と思います」はやめてくれないかな。
あれはいきなりの紹介では聞いている人にショックを与えるだろうと気を使っているんだろうか。
俺に関しては「思います」がなくてもショック死したりしないから。

あるいは、歌っていただけなかった時のための逃げか。歌手が逃走したりとか、スタッフと揉めて「やってらんねえ」と帰ってしまったときのことを考えてだろうか。そうすれば「私は思っただけで、そうしていただきます」とは一言も言っていません、って言えるもんね。言えねえか。

ともあれ、思っていない「と思います」は全面的に使用禁止。
俺が法律になってやる。

「ということで」も多用されている。
話をまとめて、次の話題に移るときには便利であるが、これももう少しどうにかならんかね。
よっぽど、話が混乱して無理やりまとめなきゃ以外の時は使用禁止。
これも俺が法律でいいや。

といいつつも、日本語には「思う」という言葉に代わるいい動詞がないと気がついた。
自分の小学校の時の作文や日記を読むと、ほとんどの文章の語尾は「思いました」で終わっている。
頭ワリー。
言い訳じゃないが、あれは悪しき読書感想文のせいではなかろうか。何か感想を書かなきゃ、という強迫観念が「思いました」と書かせたのではないか。それが何かを書けといわれた時に「思います」連発につながったんじゃないかな。非常に底の浅い分析ではあるが、少なくとも自分のことを考えると、そのような結論に至った。

「思索する」「思考する」「思惟する」「思議する」「思誠する」「思念する」「思料する」とか日本語には「思」がついた言葉は多いが、そんなの小林秀雄の評論くらいでしか見ないんじゃないか。だんだん大倉が馬鹿丸出しになってきているような気がするが、ここは続けさせていただく。

「考」はあまりないんだよね。「考察する」はすぐに思いつくが、他の「考」のつく熟語は別の意味になっていることが多い。

やはり日本人は「考える」んじゃなくて「思う」方が好きなのである。思うほうが緩い感じですね。

英語だと思うに該当し、普段からよく使われる言葉はすごく多い。
think, consider, regard, believe, feel, suppose, guess, suspect, assume, presume、まだまだありそうだけど、ざっと思いついたところでもこんなにある。微妙なニュアンスの違いで使い分けたり、何も考えないで、癖で使ったりしている。こんなにあると「と思います」病にはかからないですむんだけどな。

ということで、私はそんなふうに思いました、と思います。

写真のお嬢さんはロンドンで私のアシスタントをしてくれていたサマンサさんであるが、彼女は私に「何かして欲しい?」と聞くとき必ず「Did you want me to ・・・」と言っていた。
「なんで過去形で聞くの?」と尋ねると目を丸くして、「えっ!過去形で聞いてた?」と驚いていた。
どの国でも口癖はあります。