中国の権力闘争

「権力闘争」ってなんだか威勢がいい言葉じゃない?

私たちの世代は田舎で投石、催涙弾、火炎瓶が飛び交う70年安保闘争のテレビ報道を見て、怖いけどあそこにいたい、一緒にゲバ棒ぶん回してみたい、と何が問題でスゲーことになっているのか全く分からなかったけれど、どこか心の底に疼きを感じたものである。

そんなことなかったすか?私だけかな。

そのせいか、「闘争」という言葉に妙に反応する。

木曜に出先で「重慶市の市長が解任された」と聞いて、あれ、薄氏は市長だったっけな、とこんがらがったが、やはり市長ではなかった。もうそのあたりから中国の権力闘争の謎が深まってきて、面白がっていいのかいけないのか分からなくなる。

薄氏は重慶市党委員会書記で実質的な重慶市トップだが、書記だもんね。書記長くらいにしといてくれれば、ああ、なるほどね、と納得するが、これじゃわからん。重慶市長というのは別にいるんだから、私どもの感覚で言えば、政治的には市長が権力持ってんじゃないの?だが、共産党でのポジションが優先されるからそうはいかないんですよ、と解説している私もよくわからない。

太子党」「共青団」の間の権力闘争と言われているが、言っていることは日本の自民党民主党くらいしかないんじゃないの?自民党の方が世襲議員が多いからどっちかというと「太子党」かな。お父様が党実力者だった方々が、「太子党」。中国共産主義青年団という共産党下部組織に入り、実力で這い上がってくるのが「共青団」。

そのふたつの「対立する」グループの権力闘争の中で起きた事件が重慶市トップ更迭となるそうだが、何が問題になっているのか報道を見てもさっぱりわからない。暴力団一掃キャンペーンがまずかったのか、今どき毛沢東時代の革命歌を歌わせていたのがやばかったのか。そうだとしたら私も上海のカラオケ屋でお姉ちゃん相手に「東方紅」とか歌っている場合じゃないよ。

毛沢東時代からそうだが、中国の権力闘争は実態がよく見えない。いきなり劉少奇が失脚したり、林彪が死んだり、訒小平が降ろされたり戻されたり、四人組が逮捕されたり突然「悪い奴」が出てくるので、一体誰と誰が喧嘩してるんだか、その喧嘩のモチベイションが不明だったりで、事件が起こるたびに日本の新聞でも大きく取り上げられるが、あとになってあれは間違ってましたねえ、ということがほとんど。でなければ、いまだに何だったのか藪の中。中国の方々はそのあたりよくご理解されているのだろうか。

香港紙に今回の騒動の大本は、薄氏の家族への不正追求に怒った薄氏が子飼いだった王前公安局長を更迭したところから始まっている、と書かれているらしいが、薄氏が更迭された後の王氏の行方は不明のまま。

こいつとこいつが新しい政策集団を作りました。
新たな政党ができました。
地方政党が国政に力を持つかもしれません。
てな日本では、あそこがくっついた、喧嘩した、「意見交換」をした、とバレバレなんで、へー、ってくらいのことは思うことができる。ただ、それでどう変わるのかが見当もつかないだけですな。

わからないことほど大きなニュースになる。
日本もアメリカもロシアもどこのどんな国でも常に権力闘争は行われている。むしろ今上げた3カ国のほうが、権力闘争で盛り上がっている気がしないでもないが、やはりこの「権力闘争」という言葉が一番似合うのは中国だな。

もう「太子党」「共青団」のことはわかりましたから、今後は「なるほど」と膝を打つよな報道を切にお願いしたく存じます。

ネパールではもう4年も前から新憲法制定に向けて制憲議会がえんえん続いているが、この国の方々、議論好きなのか、まとめようとする気がないのか日本並みに政権が続かない。
国名はネパール連邦民主共和国と発表されたのだが、全然連邦制にはなっていない。
そんないい加減なところも嫌いではない。

写真は4年前ネパールのバクタプルで開かれた女性解放のための大デモンストレーション。政治的なものではないと言っていたが、明らかに政治集会だった。座り込んでいるのが女性ばかりなので、まぶしくて大変。