これから東京で暮らす方へ

昨日の放送でとんでもない間違いをヘラヘラ話してしまいましたが、あえてここで聴いていなかった人にまで恥を晒すことはないような気がいたします。
聴いていて「大倉バカだな」と思われた方、穴があったら入りたいくらいですから、許して。

さて、昨日は東京に初めてやって来た時のことを冒頭で話しましたが、あれは冗談ではなく、東横線で固まってしまった。えーと、40年近く前のことです。あの路線には特急、急行、今はないかもしれないけど快速なんかもあったりして、国鉄にしか乗ったことのなかった私はどこで特急券急行券を買うのかわからず、理解できるようになるまで「普通」にしか乗らなかった。
「普通」というのも不思議な名前の電車でしょ。

何の変哲もない電車。そんなことを言えば特急でも、急行でも特殊加工してあるわけじゃないから普通だったんだけどね。田舎から出てくる人のために「鈍行」と書いてあげていただきたい。安心して乗るから。

ついでに、「特急も急行も鈍行と同じ料金ですよ」と書いておいてください。
こっちのほうが大事だな。
しばらく乗れなくて、やたら電車の中で過ごす人生が長い人がいるはずだから。

あとねえ、誰の責任でもないんだけど、東京に来た時は道の歩き方が分からなくて、10秒に一度くらいはどなたがわからない人にぶつかっていた。

特によろけて歩いていたわけではないんだが、みんな歩くの早いじゃない。それにまっすぐ歩こうとすると必ず前を斜め、横に歩いている人がいますよ。
そうすると前にも後ろにも進めなくなって立ち止まる。当然後ろから歩いてくる人は、突然前歩いている人間が止まってしまうんだからぶつかってしまう。

ああもう、そんなことが繰り返されていると、人が多いところに行きたくなくなる。
もうどこにも行かない、っていい若いもんが言ってられないんで、勇気を出して出かけているうちに、人にぶつからず歩けるようになっている自分に気がつく。

自分をよーく観察して見たことがあるんだけど、あれ、人がどのように動くか予想がつくようになっているんですよ。で、その人とギリギリの線ですれ違うことができるように体が反応するの。ちょっと体を斜めにしてみたり、ほんの少しスピード落としていたりしてるんですよ。

俺はすごい技を身につけたなと思ったもん。
最初ベトナムに行ったときは、自転車とバイクの洪水を目の前にしてどうして道路を横断すればいいのか見当もつかなくて、ベトナム人を見つけてはその人にピッタリくっついてコツをつかんだものだが、じき慣れる。
あれと同じ。渋谷のスクランブル交差点ができたのいつだったかわからないけど、あそこだってスイスイ渡れるようになりますよ。

あそこはね、初めて見た人間は全員絶叫するんだから、安心して叫んで大丈夫。
ロンドンの広告代理店の人間が来て、あそこにぶち当たった時はすごい反応だったよ。
「シン、すごいぜ、これは。絶対ここでCM撮ろう」
ほとんど海外から来たクリエイティブの人間は同じコンテ描いてるから、今度チェックしてみて。

30代の時、8年間日本を離れていた私も、スクランブル交差点で凍ったから心配ない。
慣れればなんてことない日常の光景に変わるんだから。

大東京、意外に歩ける。
電車に乗らなくてもずんずん歩けたりする。
歩くと加速度的に東京が理解できるようになるんで、是非試してみて。

ネパールの人は神様の前ではよく並ぶ。割り込んで喧嘩してるのなんか見たことがない。
ギューギューに詰めているのは癖だな。
道歩いてて、人とぶつかることもありません。