東京に来た新大学生諸君

というタイトルで、4月頭に颯爽と若い人のためになる話を書こうと思っていたのだが、帰ってきたら4月16日になっていて、順応性にすぐれている最近の連中はもうすっかり大学生でいやがる。

せっかくさすが37年前の新入生と絶賛されることを書く気でいたのにな。

うーんとね。
まずは東京を怖がりましょう。
怖いところじゃないんだけど、新しいものへの恐れは決して悪いことではない。
前にも書いたけど。俺なんて日吉の都荘という、いかにも都落ちした人間が住みそうなアパートに閉じこもっていたからな。

この都荘、家賃2万円で当時の相場よりは高かったんだけど、風呂がついていたんですよ。
風呂代も払いたくない私は飛びついた。

トイレは一回部屋から出なきゃ行けなかったんで、冬場は辛くてときどきコンロひとつのキッチンで水を流しっぱなしにして、用を足したことがあるな。きったねえなあ、と思うでしょ。でも、もっと汚い奴らはたくさんいたから安心して。

会社に入って、某有名コピーライターと仕事をした時に、やはり学生時代の最悪の用の足し方を聞いてゲラゲラ笑いっぱなしで、ああ俺はすごくましなほうだったと心の底から安堵した。
その方はみんなで火鉢を囲んで酒を飲んでいて、酒が入ると動くのが面倒になり、トイレに行きたくなると、みんな火鉢に向かって放っていたということで、長年それをやっていると、当然底に溜まって来て、臭いのなんのってありゃしない、ということでした。

トイレ行けっつーの。

で、私の都荘の風呂は八部屋共同風呂で、ユニットバスがひとつだけ。

ほんの少し前まで浴場つきのアパートかよ、と思ったでしょ。
違うんだよ。

風呂に入ろうと思ったら、夕方から何度も風呂の入り口にぶら下がっている「入浴中」「空いてます」の札を確認に行かねばならない。私は2階にいたので、一階の札を見に行くのがとても面倒。
ただ、早めに入らないと小さな湯船に新陳代謝が激しいというか、ただ汚い男子大学生が次々に飛び込むので、8時くらいにはすでに濁ってきて、最後になればもうお湯はドロドロで湯に浸かる気にはなれない。

あれはもう嫌だ。

そう、怖がることを恐れるな。
怖がるということは、裏返せばイマジネーション豊であるということである。

何にでもドキドキすればいい。
どうしたって、すぐに慣れてしまって飲んだくれるようになるんだから。
あれ、最近はならないんだっけ。

いずれにしても、春はテニス、冬はスキーなどという私が全く未経験の楽しい日常がやってきてしまうんだから。何でも怖がって、驚いて、それをどう思うかを吟味してはどうだ。

私は今でも何でも怖いし、ドキドキするし、驚く。
ただ、そう感じる自分が面白いと思えるようになった。
意外にそういう自分が好き。

この浅草のストリップ劇場、ロック座にはまだ行ったことがないんだよなあ。
行って怖がってみたいなあ。