英語の勉強2

前回は何かの役に立ったのか、さっぱりわからぬまま終了させた個人講師派遣業者による、お勉強の話で終わりました。

実は個人授業を受ける前にTOEICのテストを受け、さっぱりわからなくて呆然としてしまい、衝動的に受講に至ったのであった。
点数は全身からドス黒い汗が出そうなほど気分の悪くなるようなものだったので、教えない。
つまらんことをしたと思いつつも、ペラペラ気持ちよさそうに英語でお話されている皆さんの爪の垢を煎じたほどの効果があったかもと受講打ち切り後再度受けてみたら、60点上がっていた。

この数字は微妙で受講のおかげか、自分で教本を勉強した結果だったのかはわからないままである。

評価は仕事でも「何とかなるでしょ」だったのだが、これは嘘である。
自分の体験を話しているので間違いない。
あんな英語でいきなり仕事に突っ込んで行ってたら、一ヶ月で軽く3億円くらいの損を出してたに違いない。

積極的に話す努力をすることはいいことだが、自分の実力を楽観的に評価するのはやめたほうがいい。旅先で「何でも通じる。日本語でも怒ってりゃ通じる」と限られた範囲で判断してしまうのはやめたほうがいい。それは怒っているということが通じただけで、何に腹を立てているのかはパントマイムがうまい人以外は細かなことを相手に伝えられていないので、ややこしい話になると埒があかなくなる。

例えばですよ。
高級ホテルに新婚旅行でチェックインしたら、コンプリメンタリーでシャンパンと果物が用意してあったとするでしょ。そしたら、シャンパンはそのまま置いてあって、全然冷えていない。氷も同じフロアーに製氷機が無い。シャンパングラスはふたつあるが、片方は飲み口の一部が欠けている。
果物はおいしそうだが、残念ながらマンゴーをひっくり返してみたら、傷んでいる。果物ナイフで食べられない部分だけを取り除こうとしたら、手が滑ってナイフを親指に突き立ててしまった。血に動転した奥さんは気を失った。

上記のことはそんな体験は皆無の私が勝手に作り上げた妄想なので、ありえないと思われるが、よくオッサンが「事実は小説よりも奇なり」というじゃない。世の中絶対にないことはないんだよ。

さて、そんなことが起こったら、電話で「お前らが気を効かして、シャンパンだの果物だの用意したからこんなことになっちゃったじゃねーか」と日本語で怒鳴りますかね。

私なら奥さんはそのうち目が覚めるだろうから、ベッドに寝かしといて、シャンパンは冷蔵庫に入れ、マンゴーは好きじゃないからそのままゴミ箱に放り込んで、怪我したところを水で洗い、たいしたことないんで最近重宝している直りの早いバンドエイド貼って、寝るね。

全然英語使わないじゃん。
どうもいい例じゃなかった。

まあ、面倒な英語は使わないに限るね。

そんなことばかりじゃ無いんで、やはり仕事をしなけりゃいかん、ということになると英語は必要である。

TOEICを2回受けてすべての可能性を断たれたとしぼんでいたら、いきなり上司から「お前4月から海外ね」とこそこそ話をされて、冷や汗びっしょりになった。海外希望といってもあれですよ、いざとなりゃ開き直れるじゃんという、「宇宙飛行士になりたーい」的なノリだったのに、ノリが現実になったら悲劇でしょう。
「マジすか」
「マジでお前当たっちゃったよ」
「ヤバイすね」
「お前が希望してたんじゃねえか」
「部長も当たりって、くじ引きみたいなこと言ってるじゃないですか」
「まさかだもんな」
「どうしましょう」

という会話は全く無駄で、「当たった」人間は有無を言わさず海外に放り出されることになっていた。
ただ、一年間のお楽しみ海外研修付きなんだけど。
ともあれ、次の段取りは研修に出るまでの最低限までの英会話能力の向上であった。

ベルリッツに通わされることになった。
あのころのベルリッツは受講料は高いし、講師は厳しいしで、ある意味私的には評判がすこぶる悪かった。初めて行っ時、実力判定みたいなことをやらされたような記憶があるが、雲の上を歩いていたようで、まるで覚えていない。個人講師派遣のほうが気が楽だった。
服装もきちんとした、シャキッとした英語教師って感じの先生が待ち受けてるのよ。
で、こちらの皆さんも日本語できるのかできないのか知らないけど、英語でしかお話にならない。
ちゃんとした教材が渡されて、てきぱきと授業が進んでいく、と思っていたのはもしかしたら私だけで、先生としては外れの生徒に当たっちゃた、というところだったのではなかろうか。

「じゃ、このページに書いてあることを口頭でサマライズして」
サマライズとは要約のことである。
えーっ、そんなこと一言も先に言ってなかったじゃん、と文句を言っても取り合ってもらえない。
もう、海外へ出発するまで時間が無いので、2時間続けてだったりすると、ぐったり疲れてそのまま教師を置き去りにして寝てしまいたくなる。
たまに、「教材?ほっとこうぜ、最近面白れーことねー?」って感じのすぐにクビになりそうなのもいたけど、あっちのほうが楽だったね。

どうなの、あの授業は役に立ったの?今でもたくさんある英語学校ってどうなの?

私はその後、英語がへた組に分類されて、アメリカのメリーランド大学に他の4人とともに送られた。
メリーランドでの約半年は楽しかったのだが、またそれがあだとなる。
続きは次回。

勉強以外の話が多くて、ちっとも前に進まない。あと最低2回は続く。

ちなみにTOEICの試験はアメリカのあとロンドンに送られ7年過ごしたが、一度も受けていない。
しょんぼりした時と同じか、それより低かったら一時的に立ち直れなくなりそうだもん。

ここはイギリスの湖水地方なんだけど、イギリスの場合は「標準語」というものが曖昧で、テレビでも「LOVELY」というちょっとした愛想のいい受け答えの言葉も「ロヴリー」と発音するおばさんがいたりして、地方に行けば皆さん堂々とその場所のアクセントでお話しになる。さっぱりわからなかったりする。