検察の「承服しがたい」に承服しがたい

東電社員殺人事件で収監されていたネパール人、ゴビンダ・マイナリ氏の再審が決まったと大変喜んでいたら、検察が「承服しがたい」と異議申し立てを行ってしまった。
それやられちゃうとまた延々時間食うんだよ。異議申し立ての審査だけで最高裁までいっちゃったりしたら、このループは永遠に閉じたままになるんじゃないか。

いいかね、検察の諸君、今回の高裁の再審決定は再度審査しなさいって決定で、無罪と決めているわけじゃないんだよ。引っかかるところがあるんで、もう一度と言っているだけなのよ。高裁が「有罪とは言いかねるんじゃないの」と言っているんだから、あんたたちは「完全に有罪です」ってがんばりゃいいじゃないの。

ここで、高裁が疑問に思っちゃったことさえ、「それはおかしい」という異議申し立ては「疑わしきは被告人の利益に」の原則を完全に逸脱してないすかね。
裁判所が「裁判やりましょ」と言っているのを「やりません」と言ってるんだよ。君たちは。

私が自分で調べたわけじゃなくて、佐野眞一氏のルポ、その他報道で判断するのは偏りがあるといわれても仕方が無いが、知りうる限りの情報を集めて私なりに判断すると、もともとゴビンダ氏を容疑者にすること自体、佐野眞一氏の言う通り「無理筋」である。マイナリ氏が女性が殺された部屋の鍵を預かっていた。殺された女性と過去関係があった。現場に残されたコンドームの中に付着していたマイナリ氏の精液と体毛。ほとんどこの3点で有罪とされている。しかし、この3点の「証拠」にもおかしな点が多々ある。
マイナリ氏は最初から「自分ではない」と申し立てており、一切自白はない。
佐野氏は綿密に勤務先から自宅へ帰る時間を計測しているが、とても殺害に及べるよな時間の余裕はない。そのほかにも検察に不利な事実は証拠としては取り上げられていない。
詳しくは佐野眞一氏の著書を。

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

東電OL殺人事件 (新潮文庫)

あげくの果てに一審で無罪となったあとも国外逃亡の可能性があるとのことで、高裁の中でもギリギリの攻防の末、勾留が決まっている。無罪という判決が出たあとの勾留ってなんだ。
無罪なのに勾留してしまったら、今度は裁判所の面子を守るためにも有罪にするしかなかったんじゃないか。うがちすぎですか?

元高裁の裁判官で現在弁護士の方が昨日テレビで「冤罪です。冤罪です」と2度繰り返して話をしていた。その方が言うから「冤罪だ」と充分な知識が無いのに大騒ぎしているわけではない。
ちゃんとすぐに裁判しろ、と騒いでいるだけだ。

幸い、高裁が釈放を命じたため、マイナリ氏はネパールへ帰国することがほぼ決まっている。それだけ、今回の高裁の判断は無罪に近かったものだったはずだ。

ただ、日本は一応法治国家であるから、出廷義務のないマイナリ氏抜きで粛々と裁判のやり直しをすべきであろう。それで「無罪確定」の判決を出せばよい。
このまま、名誉回復がされないままではマイナリ氏もたまらないであろうし、「異議申し立て」が認められてしまえば日本の裁判に対する疑念をまだまだ長い間引きずることになる。

こういう場合、検察の異議申し立てに異議を申し立てる制度はないのだろうか。俺がやるからさ。

マイナリ氏がどこに住んでいたか忘れたので、ネパールのナガルコットで撮った写真を貼り付けときます。