五円計

私の住むマンションは20階建てで、17階に住んでいる。
しかも江東区というよく揺れてくれる場所にあるため地震には神経質である。
震度1でも「あ、目眩が」と昼メロのようなことになる。頻繁に揺れる時期は揺れてるんだか、私の三半規管がおかしくなったのかわからなくなる。
一度はひどい中耳炎、一度は酒の飲みすぎで立っていても横になっていても突然世界がまわり始めたことがあるので、なおさらである。

横になっていて目眩はないだろうと思うでしょ。ところが来るからね。少し頭を動かしただけで天井が本当にまわりだす。同時に自分も横になっている感覚がなくなり、ベッドごと宇宙飛行士の訓練でどの方向にも360度まわる機械を使うでしょ。あれに乗せられている感じで、ベッドのシーツを握り締めてないとどこに飛ばされるかわからないという悲惨なことになる。
どうしても毎日かなりの量を飲まなければならない時期にそうなりました。肝臓の数値も急速に悪化し、しばらく医者から酒厳禁を言い渡され、淋しい日々だったな。
お酒はほどほどに。

地震が頻発している時は揺れてなくても揺れているような気がしますね。
私はあれがひどくて、二日酔いの日なんかPCに向かっていると「あら、揺れてる」と椅子にしがみつくことがよくある。そういう時、確かめようがなくてカーテンを見たりして、どっちなんだ、と考え込んでしまうことばかりで仕事になりゃしない。二日酔いのため、もともと生産性は極めて悪いのに、揺れてる揺れてないで混乱するので、そういう時は寝ることにしていた。

そこでありったけの知恵を絞って開発したのが五円計という名の地震測定器である。
これは精度が高い上に非常に安く、自分で作ることができる。10円弱?
これがあれば「おー、揺れてる」「なんだ、俺が揺れてんのか」ということが一目で分かるので、揺れている時だけあたふたすればいよい。

皆さんに無料で制作方法をお教えします。家のあちこちに置いておくと重宝しますよ。
正確に言えば置いとくのではない。吊るします。
人に教えるよなことかよ、とすでに馬鹿馬鹿しくなってきている方もいらっしゃるだろうが、やっているのかね、君。実行しなけりゃ意味がないんだよ。
すっかり、正体不明の私の作り出した幻想の人間に動揺してしまった。地震よりも心の揺れの方が怖いこともあるな。

五円玉に糸を通しましょう。長さ50センチくらいになるように糸を結びます。その糸を壁に張り付かないところに画鋲で止めます。これで完成。50円玉でもいいんだけど、つい使いたくなるから個人的には五円のほうがいいと思うな。糸の長さは長いほうがいいんだけど、邪魔臭くなるから50センチくらいが適当であろう。

この五円計はどんな小さな揺れも確実にキャッチする。お、そうなことを言っている今、微小の揺れを観測した。体では感じなかったのにすごいなあ。どこかでほんの少し揺れたと思うよ。
震度3くらいになるとブンブン踊り始める。大震災のあと発明したので、まだ活躍していない。あの時は自宅はメチャクチャになっていたので、5円計があろうがなかろうが同じだったはずなんだけどね。

つまりこの5円計は大震災には役に立たない。
自分が揺れているのか、本当の地震なのかの見極めに役立つだけである。

それでもありがたいものを発明したな、と自分で感心しているので、私のためになっていることだけは確かである。

こういうことである。カーテンは娘が3歳の時に買ったものを転用しているので、柄については気にしないでいただきたい。