波平、その後

波平を愛しているわけではないが、あんなことがあったから、つい元気かな、とご機嫌を伺いに行ってしまう。
わざわざ桜新町まで出かけて行って、頭を撫ぜて来るようになると「それはもう『愛』だろ」と言われても仕方がないが、月一回くらい桜新町に用があるので、嫌でもあのおかしな銅像を目にすることになるのである。するとこれまた毛はあるかな、と眺め、どのくらいしっかりくっついているか思いっきり引っ張ってみたりしたくなるけど、しない。

監視カメラがあるからではない。
やはりどことなく親近感があるからなんだろうなあ。
冷静に見れば波平と私の頭の毛の具合は非常によく似ている。
具体的に言えば、前から頭頂部まではほとんど毛が見えない。私の場合は優しい産毛があるのだが、そんなものストロボ一発で消えてしまうし、万が一テレビに出るようなことがあればあのはた迷惑な照明でつるっぱげにされてしまう。そういえば何回か映されたな。波平そっくりだったぜ。

おまけに先日から私は55歳と偽って年齢を告白しているが、本当は54歳である。心構えのつもりが、その気になってしまっていたのです。
波平と同い年。
来月になれば波平を抜いてしまう。
彼は当然だろうが、ネクタイをして、背広で仕事。自宅に帰れば和服で通している。
私はスーツは礼服しか持っていない。和服はない。
夏場はTシャツに薄手のカーゴ、靴下なしのサンダル、と仕事に行く時も、桜新町に出かけるときも、長旅に出かけるときも同じ格好。趣味にも似たところはまるでないが、やはり同級生である。ある種の友情が湧いてきても仕方ないだろう。
桜新町で出会うと「どうだい」と声をかけたくなるのはそういうわけである。
他の5人には何の興味もない。お世辞にも「孫、可愛いじゃないか」とか話しかけたりはしない。

そんないきさつがあり、波平の前に立った。
しかし、この水色の毛というのはどういうことなんだろうか。
毛一本を水色に染めている。意外にも君はサイバーパンクかね。
ご利益があるかもしれないと頭を撫ぜてみようかと思ったら、すごいことに気が付いた。
波平の毛は鉄製ワイアーでできていて、相当の剛毛と聞いていたのにおかしなパーマがかかっている。

これだ。

よくわからないかな。寄るとこうなる。

天パーだとは知らなかった、なんていってる場合じゃないだろう。
いろんなこと考える奴がいるものだ。
監視カメラあるんだよ。
犯人たち、君たちはカメラに収まっている阿呆だぞ。速やかに商店街へ自首しなさい。商店街のどこだろう。ケンタッキーかな、すぐ近くにあるな。ケンタッキーに自首せよ。ケンタッキーの店の人間に「そんなこと言われても」と断られたら三河屋さんを教えてもらいなさい。三河屋に出頭せよ。
なんならFBで私にメッセージを送ってくれてもいい。悪いようにはしないから。

しかし、どうやった、意外に簡単に曲がったかね。
あれは人の手で曲げられるような角度ではない。ペンチ2本くらいは使ったんじゃないか。
そのあたりのところをじっくり話を聞いて、ネタをもらってから自首についていってあげよう。
やっぱ、夜?
あのあたりは夜は早そうだもんな。顔面マスクとかしたの?

それにしても、マスコミはどうした。
毛を抜かれた時に絆創膏の貼られたハゲ頭をさんざん映しといて、商店街の方のコメントも全国的に流し、やくみつるさんと水前寺清子さんの植毛式をやってたじゃない。「二度とこんなことのないよう、心無い真似はしないでください」とお願いしてたじゃないか。
このパンクな毛はいいのか。
「宇宙人の仕業かもしれませんね」くらいのことは言ってもいいんじゃないか。

今後の展開を注目している。
俺くらいかな。

追記
今日は夜11時からJ-WAVEでBOOK BARの日ですよ。お忘れなくね。
「私的Found MUJIの旅。」はまだまだずーっと公開してます。
今日のお勧めは「大倉眞一郎からのメッセージ」だ。
http://ottava.jp/muji/message.html
高覧いただけましたら幸いです。