うなぎ

昨日銀座を歩いていると、うなぎ屋さんの前に行列が。
はて面妖な、と覗き込むと「土用の丑の日」と張り紙がしてある。
なんなの、その「土用の丑」というのは、と疑問に思うほどバカではないが、このクソ暑い中、銀座の高級店の前で並ぶかね。

私は蒲焼には執着がない。
どなたかが奢ってくれるということになれば、ホイホイついて行って、ああ、うなぎもうまいものだ、と人並に感心するのだが、自分が金を払ってうなぎを食いに行ったことは、私のこれまでの人生では一度もない。

理由は明らかで
1.18歳まで下関にいたが、一度もうなぎの蒲焼というものを食べたことがなかった。従って「うなぎを食う」という習慣がない。
2.私には高すぎて手が出ない。

下関で食べなかったのは、外食の習慣がなかったからである。父親が何度か夕飯時におでん大学というおでんの店に連れて行ってくれたことがあるのと、毎年一回だけ家族で中華料理を食べたことがある。
それだけ。

じゃ、下関ではうなぎを食わないかというと、どうもそうでもないらしい。
田中慎弥の「共喰い」では、うなぎが小道具として非常にうまく使われている。
しかし、興味がないと目に入らないからなのか、うなぎ屋さんを見たという記憶がない。
下関で昼飯というとラーメン以外思いつかない。
安上がりだが、もしかしたら淋しい人生なのかもしれない。

うなぎを食うと精がつくらしいが、あれは本当なんでしょうか。本当ならどんなことになるんでしょうか。どなたか詳しく教えていただけませんでしょうか。
何度か奢っていただき、「ああ、おいしいなあ」と思ったことはあるが、「うーん、精がついた」という感覚を味わったことがない。二日酔いの時にいただいて、胃がもたれ、苦しい思いをしたことはあるんだけどな。

そんなわけで、世の中はうなぎが高くてなかなか手がでないと庶民の皆さんがご苦労されているようだが、私には何も影響がない。
昨日は皆さんやはりうなぎを召し上がったのだろうか。
土用の丑だから食べとかないと、なのかしら。
銀座では安くても3000円はするんじゃないの?もっと?
お昼に食べるの?

スペインにはうなぎ、アンギラス、特に稚魚をニンニクとオリーブオイルでギトギトにした超高級料理がある。私は他のものが食えなくても、それを小さな木製フォークでスパゲティのようにしていただければとても幸せな気持ちになれるんだけど、日本じゃ量が驚くほど少ない上にうまくないから、やはり食べない。
日本で自分の金でうなぎを食うことは残り少ない人生だがきっとないだろう。
そんなことを思ったら急にはかない気分になってきた。

昨日は昼飯抜いて、アイスバインをつつきながらビールを飲んで、安くてうまいハイボールの店に行き、バーでボトルを空けてしまい、意味がわからないほどどえらく安く、あまーい気分になるフルーツカクテルの店にまで回ってしまったが、途中で稼ぎの半分は酒に使っている酒豪の滝村が、初めてグラグラに酔っ払って、寝てしまい、それでお開きになった。
うなぎ食わせとけばよかった。

香港でうなぎを食ったことがあるが、あんまりおいしくなかったね。