浅草の灯が消えていく その2

もちろん浅草だけが気になる町ではない。
東京には味わいのある町はまだまだたくさんある。
ただ、浅草はね、町全体がサーカスのような趣があって、いつ行っても好きな場所の前で何もせずにずっと立っていられる、そんな所なんですよ。
観光でいらした方々は雷門、仲見世浅草寺の人ごみを楽しまれますね。

こんな感じでしょ。

その先まで足を伸ばす方はそうは多くないだろうけど、なんだかわからない道をふらふらしていると必ず胸がキュンとなる場所があります。そういう場所が減ってきたことが悲しいという話なんだけど。

ただ雷門の隣にはかなり前から「ホテル雷門」があるってのは、すでに浅草が昭和の一番いいときの輝きを失ってきていると言うべきなのかしら。まあ、これも粋のうち、ということにしてもいいんだけど。ビジネスホテルって感じじゃないもんな。

浅草から消えていったもの、消えつつあるもの、たくさんあるよ。
浅草の路地、特に食通街には間口の小さな料理屋がたくさん並んでいて、どこに入っても間違いがなかったんだけど、もう納得がいく店は数軒しか残っていない。

それとまた真逆なんだけど、ここは一体何がおいしんでしょうか、というお店も消えつつある。
スパゲティ、カレー、ラーメン、天麩羅、寿司なんかが全部置いてある店がたくさんあったのよ。なかなか勇気が出なくて入ったことはなかったんだけど、どこにでもありました。
改めて探してみるとほとんど消え失せている。
昔のデパートの大食堂という雰囲気だったんだけどね。おそらく家族総出で浅草に来て、「みんな食べたいものを食べな」ってことだったんだろ思うんだけど、そういう需要が消えたんだな。
浅草はハレの場だったんで、みんなで行ってたんだよ。

食べさせるものは専門店化されているけれど、こんな通りもある。

有名天麩羅屋、蕎麦屋には開店前から行列ができる。

神谷バーもおんなじだ。
まだ午前11時なのにおじさんたちが並んでいるのよ。
いい日曜だ。

神谷バーは食事の前によく立ち寄ったものだ。
ビール大ジョッキを空け、電気ブランを2杯、つまみはにこごりだけでいい。
それから食事に行くから、気分は最高に盛り上がちゃってたんだけどな。

日の出煎餅は小さくなってしまったけど、昔からの場所で続けてくれているよ。
ちょうど韓国人のお嬢さんが二人大量に煎餅を購入されていた。

浅草には中国人、韓国人、ロシア人、アメリカ人、ナイジェリア人もたくさん来てくれている。
この町はどんなものでも受け入れて、みんなが楽しくなれる場所。
仲見世で笑顔じゃない人を探すほうが難しい。

昔は「夜逃げ屋」ってのもあって、夜逃げの手引きをするんじゃなくて、叩き売りの店。
なんだかよくわからない電気製品なんかをどんどん叩き売っちゃう。ウォークマンに見えるけど、本物じゃないよー、ってな商品が、あら買っちゃおうかしらって値段までどんどん下がる。するとあちこちからお金を持った手がニューニューと伸びてきてあっという間にさばけてしまう。その口上が面白くてしばらく眺めたりしていたんだけど、もうないね。大きなディスカウントショップができたんじゃやっていけねえ。

洋服屋も多かったね。
安いけどどんな人が着るのかしら、ってお店はあるだけで心が温まっていました。
まだ残っているけど、こちらも曲がり角かもしれない。
一軒大きなお店がどっしり構えていた。おばあさんが孫を陳列台に乗っけて商品整理していたよ。
このお店長く続くと嬉しいんだけど。

まだまだ浅草ネタには困らないから書きますが、また今度。

帰りにもう一度神谷バーを覗いてみたら満席だ。
電気ブランを一杯だけと思ったが、また今度の楽しみにと若干肩を落としながら帰った日曜だった。