下関レポート その4 檸檬の木

すっぱいのは嫌いだが、喜ばれるのはとてもうれしい。
あんなに喜んでいただけるとは予想だにしていなかった。

実家の庭には相手にされなくなってしばらくたつ檸檬の木が一本だけ植えてある。植えて3年になるらしいが、去年まではほんの少しだけ檸檬の実がなっていたらしいが、私が帰って様子を見に行くとお化け檸檬の木と化していた。
母親は昨年東京に越してくるに当たって、この檸檬の木を誰に世話を頼むことなく見捨ててきたのであった。しかし、気にかけてくれる人間がいなくても檸檬の木はすくすく育ち、唖然とするほどの量の実をつけた。「親は無くとも子は育つ」の典型例だな。

当然世話をしていないんだから、無農薬。ワックスもかけてないよ。
そのまま洗ってかじりついてもらっても結構。
そんなわけで、むつみ村の池田夫妻のところに少しだけお持ちしたのだが、えらく喜んでいただいた。大人のご夫妻だからそこのところは少しあれしていただいたのかもしれないけど、嫌がっている様子はなかったので、どれだけお礼してもしたりないほどお世話になったので、私にできることはこれくらいしかないと決意し、昨日帰宅してから檸檬の木に正面から向き合ったのであった。お礼が檸檬てのもどうなんだかね。

丸裸にしてやろうかと思ったのだが、母親が少しだけ残しておいてくれと頼むので、取りやすいところのものを残して、高さ2メートルばかしの木のてっぺん、もじゃもじゃになっていて手が伸ばせないところところのものをきれいに採集していった。
へー、よかったね、と思ったでしょ。
実はそんなんじゃないんだよ。

私は綺麗な女性と薔薇にはトゲがあることは知っていたんだけど、檸檬の木もトゲだらけだとは全く認識していなかった。もう、痛い痛い。左手で枝、実を握って右手ではさみを使うんだけど左手は傷だらけ、中指の先にはトゲが深く刺さってしまって流血の事態。指を舐めながら作業を続けるからもう「お礼に」じゃなくて、執念の男である。戦いだな。
それだけでも腹が立つのに、先日ご説明申し上げたように下関には、実家だけなのかわからないが、蚊がすごい。トゲを注意深く避けながら慎重に作業をしている私に容赦なく檸檬の実と同じくらいの数の蚊が襲いかかってくる。作業をしていると蚊が追い払えない。寒いから顔と手だけ表に出ているのでそこに連中は集中する。手ままだいい。顔はどうしようもない。
「こんちきしょ〜、やめてくれよ〜」と怒ったりお願いしたりしながら意地になって取りまくっていたら、自分でもびっくりするくらいの量になっていた。
お世話になったあの方々とお父様にお世話になっているあいつにお送りすることにした。
こんだけの檸檬どうするんだろう。

PPMに「LEMON TREE」という曲がございます。
すごく好きな曲なんだけど、カラオケで歌おうとすると、どう歌うんだったかわからなくなって必ず断念してしまう。檸檬の木って本当にそんな感じだわ。

これが捨てられながらも、健やかに育った檸檬の木。
写真で見える実はほんの一部で、写らないい場所にギョッとするほど隠れている。
ちょっと気持ち悪かった。