(笑)

PCなんて影も形もない頃、友人から手紙をもらったりするとXXXと最後になにやら不思議な暗号が残されていることがあって、これはどういう風に解読すべきなのか見当もつかず、謎のままになっていた。手紙の内容はなんてことのない連絡事項のようなことなもので、それゆえ隠されたメッセージかという疑ったんでございます。

しかし、この暗号、自力で解読するのは不可能である。XXX、トリプルXといえばその当時はポルノ映画の過激な奴という認識だったのだが、連絡事項の手紙にいきなり「ポルノ」と書いてくるバカヤロウは世の中にはいないことくらい私にだってわかる。

ある日我慢できなくなって、友人にXXXって何?と聞いてみてビックリ。なんだったっけ。Xはキスの意味だっていうじゃない。XXXでキス3回だ。確かにXXXをつけて手紙を送ってきたのは女性だったが、普段そんな「チュー」とかいうそぶりは全く見せなかったので、そうかそんなにオレのことを、と思いにひたりかけたら、「これキスって意味なんだけど、誰にでも使いますよ」とまたたまげたことを言う。そんな馬鹿なことがあるか、「キスキスキス」と送っておいて別に意味ないですよ、ってこたーないだろう。本当はあるんじゃないか、としつこく問いただしても「ありません」とのこと。
そのときは世の中キスの大安売りだ、つまらん、とすねちゃったね。

最近ではwwwがさっぱりわからなかったね。SNSを恐る恐る覗いてみると、文章の後にw、wwwと残っている。わからん。世の中の謎は解明されるどころか、どんどん増えている。これも人に聞くしかない。聞かれた相手があきれた顔をして「笑い」の意味ですよ、と教えてくれた。ははーん、なるほどね、なんだけど、これにはどういう意味があるのかな。
「意味って、だから『笑い』ですよ。いちいち(笑)って書くの面倒じゃないですか」
「だれが笑ってるの、書いてる人、読まされてる人?」
「書いてる人なんじゃないですか、今更何言ってんですか」

確かにそうだ、栗本薫が「グイン・サーガ」のあとがきで必ず(笑)とか、(爆)とか書いてたもんな。最初に(爆)を見た時には、とうとう栗本さん爆発しちゃったかと一瞬思いました。でも、ずーっと亡くなるまで生きてたから、しばらく考えてこれは「爆笑」のことだとわかったんだけど、なぜここで爆笑しているのかは皆目見当がつかなかった。

そのほかにもSNS上ではLOLとか、R.I.P.とか暗号だらけだけど、どこからか教えてくれる人が出てくる。アルファベットで書かれたものは、「しらーん」で済む。深く考えないようにしている。

さて、ここから気をつけないと叩かれまくるからな。慎重に行こう。
私はあくまでも個人的に(笑)が苦手である。
先ほども申し上げたように、誰が笑っているのかわからないのと、ここは笑うところですよ、と強要されているようで、なんだかみぞおち辺りがむずむずしてくる。
「冗談ですよ」でもないんだよね、あれは。
自分が笑いたいなら「笑っちゃいますよ」って書いてくれると、ああ、この人は自分で書いたここで笑ったんだとわかります。だけど(笑)じゃちょっとあれじゃないですかね。やっぱりそこんとこが曖昧に思うんですが。

私が(笑)を使わないのは、そのあたりの曖昧さもあるが、文章で笑わせたい時に(笑)と書いてしまうと笑えなくなるからでございます。わざわざ面白さを(笑)で消してしまっているように勝手に感じてしまうのでございますよ。
感じない皆さんはどんどん使ってくださいね。表現の自由は絶対に守らなきゃいかん。

もしも自分が笑った、ということではなくて、ここで笑ってもらいたいと思うときは、シラーっとぼければよろしいんじゃないでしょうか。そこの表現を工夫するとさらに楽しいコミュニケーションが成立するんじゃないか、としつこいようですが個人的には思う次第でございます。

ラジオじゃお前勝手に笑ってるじゃねーか、とお叱りを受けるのは承知の上ですが、話す場合と書く場合の伝え方はやはり違うんじゃなかろうか、と。

(笑)は確かに新たな表現手法で、すでに市民権を得ているとは思うんですが、ただ馴染めないハゲがいるということかな。結論としては。
大変失礼いたしました。
特定の方に申し上げているわけではありませんので、くれぐれも誤解のないよう申し上げます。

バナーラス、インドで私を見て笑っている奥様方。笑顔で人は幸せになれるから、私ももっと笑いたいです。