イタリア総選挙
イタリアが荒れている。
総選挙前からかなり接戦になるだろうと言われていたが、確かにその通りで、上院、下院両方で連立政権が承認されないと再選挙になる。
円はユーロに対して大幅高、株もアメリカ、日本大幅安。
わかっていたのに昨日までの浮かれ気分はなんだったのか謎ですな。
さて、円高、株安はとりあえずどうでもいいのだが、問題はイタリアで今起きていることはイタリア国内問題ではないということだ。もちろんEUを大きく揺さぶることになるだろうし、さらには世界に大きな波紋を及ぼすことになる。
毎日新聞の記者、藤原章生氏が昨年末に上梓した「資本主義の『終わりの始まり』」を読むと状況が把握できる。
資本主義の「終わりの始まり」―ギリシャ、イタリアで起きていること (新潮選書)
- 作者: 藤原章生
- 出版社/メーカー: 新潮社
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- メディア: 単行本
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2国の問題は脱税による財政逼迫がひとつ挙げられるが、根はより深い。
政治の機能不全が何よりも大きい。そして政治の機能不全はグローバル経済と気分よく語られる「誤謬なき資本主義」に根ざしている。
選挙終盤になって支持率が急上昇したイタリアのコメディアン兼政治家、ペッペ・グリッコにも彼はインタビュを行っている。グリッコの主張はシンプルで「もう、うんざりだ」である。
グリッコの言うところは今回の選挙に如実に現れた。
投票率の大幅な低下である。
政治家は「どいつもこいつも同じだ」という落胆と怒りである。
藤原氏が目にしたものはどの政党であろうが、街頭演説現場で若者が憎しみをこめてつばを吐き立ち去る姿であったという。
当然だがイタリアと日本を同じように語ることはできない。
しかし、今「アベノミクス」で「成長し続ける経済」が期待されているが、本当にそのようなことがありえるのだろうか。株価が上がり期待が無闇に先行しているが、ユーロ問題、アメリカの財政問題、日本のあらゆる問題はなにひとつ解決されていない。能天気とはこのことではなかろうかと薄ら寒くなることがある。
安倍首相の高らかな対米従属宣言を見て不安が増した私はどうも世論調査によればかなりの少数派のようであるが、いまだに資本主義が内蔵する成長神話を信じることができない。
「成長なき時代」が到来した時にどうなるのか。
「来ない」というのはラクチンでいいが、来てしまった時の対処については誰も考えていない。
前向きの姿勢は勇ましいが、頭を使っていないことと同じ気がするのは本当に私だけなのだろうか。
本文とは関係ないが、写真はブエノスアイレスで出くわした大規模なデモの様子。