私の赤い靴下

石川遼君はプエルトリコ・オープンどうだったかな、と期待してPGAツアーのページを開くと最終日に74叩いて順位をチェックするのも面倒になった。最終日の赤パンは止めたのかな。赤パン履くと勝ちそうな気がするんだけど。

私は勝ち負けにこだわらず赤が好き。赤いパンツ(ズボン)を身につけるほど元気ではち切れそうな身体ではないので、せいぜい赤いセーター、Tシャツにしているが、それでも「どうしたの」という顔をされることがあるから日本じゃ気を付けなきゃいかんな。

赤いものを身につけると不思議なことに何となく気合いが入る。
やる気の赤だ。血の色だ。
血を見るとやる気が出る、という意味じゃないんだけど、神聖なものには日本でも赤が多用されている。
めでたい時は紅白饅頭、紅白幕、神社には赤い鳥居、巫女さんの袴、おみくじ自動販売機、身の回りでもあるよ、だるま、赤いちゃんちゃんこ、日の丸の赤なんてのはもうそのまんまだ。ポストも赤だな、でも気合いや神聖なものとは関係ないような気がする。あれはたぶん目立つから。
要は赤は目立つ。
目立つと頑張んなきゃという気になる。
というほど単純なことじゃに気がするが、とにかく赤は特別な色である。

本題に入る前に不思議なエピソードを。
私のことだからたいした話じゃないんだけど。

会社勤めだった頃、毎日が苦しくて、「オズの魔法使い」を見なきゃ出かけられなかったが、その時何故か赤いふんどしを何枚かもらったことがある。そんなもん「大倉さん、大好き」とバレンタインデイにプレゼントするようなたわけた女性の知り合いはいなかったし、会社が「全社一丸となって赤ふんを身にまとい突撃するように」なんてこともなかった。
いくら考えても思い出せないのだが、とにかく赤ふんを2枚持って帰ってきた。
こんなもんどうしてやろうか、と迷ったが、迷うことは何もない、赤ふんなんだから身にまとえばいいだけの話だ。
元気になれるものなら何でもいい、と本気で思っていた。
ふんどしなんか締めたことがなかったが、それほど複雑な作りのものではないので、いじっている間にどうにかなった。
格好いいかどうかどうかじゃない。それで気合いが入るかどうかだ。
これが入るんだな。
赤ふん締めて仁王立ちになると「得意先?俺が始末してやる」という殺意にも似た感情が湧いてくる。

赤ふん1ヶ月くらい続けたよ。気合いが入ったのは1週間くらいかな。
あれ実はトイレの時に大変面倒。
細かいことは誰も聞きたくないだろうが、とにかくどちらの場合もササッと事が運ばない。
その上パンツのようにピッタリ来ているわけではないので、凄くズボンの中でかさばる。
自分でも端から見ても不自然。「なんで大倉のズボンはあんなに前が膨らんでいるの」という疑問がささやかれるようになってしまった。
で、止めてしまった。
一時的にはやる気スイッチが入ったのにな。

女性も赤い下着を身につけると元気になるっていうじゃないですか。あれはいわゆるところの勝負下着じゃないですよね。おばあさんが「元気が出るわよ」とかいってるの聞いたことあるもん。
どんな気分になるんだろう。とても興味があるんで、是非教えてください。

さて、そんなこともあったが、私は40で会社を辞めてからこのかたずっと赤い靴下を履いている。
葬式の時用に2組だけダークなものが用意されているがそれらを普段履くことはない。
赤か赤に白が織り込んであるものだけ使用している。

きっかけがある。
これからスーツ着て颯爽と街を歩き回ることなんてないと決まってから、GAPに行くと赤い靴下を売っていた。男性ものの。目が離せなくなっていつの間にかレジに持て行っていた。
それがきっかけといえばきっかけ。つまり赤い色が好きだというだけのことか。
赤だけじゃなくて他の色も買って、順繰りに使っていたのだが、ある日一人で熊野三山巡りの旅から帰ってきて、その足で勉強会に行ったとき、靴脱いで上がる部屋で「大倉、赤い靴下か!」とびっくりされて、びっくりしてしまった。

そうか、そうだな、私だって会社に勤めていたときに赤い靴下を履こうなんて考えたこともなかったもん。会社勤めの場合は赤い靴下は履いちゃいけないんだった。大人の暗黙の常識である。
ところがそのとき気がついちゃったんだな。
「俺は大人の暗黙の常識の外にいる」と。
なるほど、赤い靴下は常識の外にいることの象徴なのだ。
そのときに葬式以外では赤い靴下しか履かないと決めてしまった。

それで15年たっちゃったんだから凄いね。
自分で会社作ったときもずっと赤い靴下だった。
最初は驚いていた部下の皆さんもすっかり慣れてしまって、なにも言わなくなった。
言いたくなくなったのかもしれないけど。

夏は裸足にサンダルなんで赤い靴下とは無縁だが、その他の時期は赤だ。
私の足は真っ黒か赤。
赤と黒だ。スタンダール。支配階級への挑戦だ。
全然関係ないが、似てなくもないか。

赤い靴下履いてみな。
世界がきっと違って見えるよ。
あるいは世界があなたを見る目が変わっていることに気がつくよ。

やっぱ、赤でしょ。
ウドゥムサイ、ラオス