イェーイ、二日酔い

胸張って自慢することじゃないんだけど、凄い二日酔い。
土曜、日曜と飲まずに仕事してたからその反動が来た。
二日酔いの時はできるだけおとなしくしていた方がいい。
下手に動き回ると私の場合はケガをする。

そんなわけで本日は二日酔いの時に猫のもみじと遊んでいて情けないケガをしたときのお話を一つ、別のところで書いたものを加筆転載します。

かつて美容整形は整形外科と呼ばれていたこともあった。
私は整形外科にお世話になることになって「大倉はとうとう二重にするらしい」などという噂が立つのは嫌だなあと躊躇したことがあったのだが、何のことはない。みんな普通にあそこが痛い、ここが痛いで通っているのがわかり安心した。

この10年くらい整形外科にお世話になることが増えている。
治療内容は秘密だが現在も定期的にお世話になっている。
本当に顎いじってたりしたら皆さんちょっとびっくりするかしら。
そのうち別人28号の顔で現れても何もなかったような顔でやりすごしてください。

本日は人が聞いて顔が曲がりそうになるくらい痛そうな話をお届けしたい。
痛い話が苦手な方はこれ以上読み進めるのは止めてください。

それはちょうど私が会社を解散した翌日であったと記憶している。
2000年の10月の頭である。
折しもインドに旅立つ約3週間前。
毎日理由をつけて飲んでいたので、いつも二日酔い。
会社を解散して気も緩んでしまい、せがまれるまま家で昼間から猫と遊んでいた。
うちの「もみじ」は走るのが好き。当時のもみじは私とも無邪気に遊んでくれていた。現在は再三お伝えしているようにあちらは私のことを敵だと認識しているようである。
猫じゃらしを持って、狭いマンションの端から端まで走り回ると、 猫も時には私を抜き去って行ったりする。
競走になったりしている。
どうでもいいことだけど猫の走り方って馬に似てるって知ってました?

私は家の中では私はメガネをはずしていることが多い。
大体本を読んでいるのだが、私の場合は近くのものを見るときはメガネがないほうがよく見える。
ほんの10分猫と遊ぶからといっていちいちメガネをかけたりしない。
ここから間違っていた。
しかし、メガネをかけていても二日酔いだったので結果は同じだったかも。

猫と走り回るのは楽しいのだが、すぐに私も猫も疲れるから通常は最初の数回一人と一匹は全力で部屋を駆け回る。
あとはやる気のない一人と一匹なのだが、事件は早くも2周目で起こった。

私はもともと普段歩いていてもよれる傾向があり、よく足の小指の先を柱にぶつけて、 しばらく丸くなって呻いている。
使うこともないあんな足の小指に神経を集めておくとはどういうことなのだろうか。
みんな同じかもしれないが、私の足の小指は特に敏感にできているような気がする。

全力疾走といっても部屋の中のことである。
たいしたスピードは出ていないのだが、またしても小指をどこかにぶつけた。
どこにどうぶつけたなんてわからないでしょ、普通。
二日酔いなのだからなおさらである。
「またやった。アホだな、俺は」
と私を見上げるもみじを無視してソファに転がり、小指を押さえて仏様に「この耐え難き痛みを取り除きたまえ」と念仏を唱えていた。

痛みは一向に引かない、むしろ増すばかり。
やっぱりこういう時、仏様はだめだな、神様にしようかと足をのぞいたら、あららら、血が出ているじゃないの。
血は特に怖くない。
しょっちゅう血液検査で血を抜かれているからかもしれない。

皮でも剥けたかと丸くなって痛みの元を観察すると、
「..........」
こんな恐ろしいものは見たことがない。
自分の身体なのに。
てっきり小指の外側の皮を剥いたと診断していたのだが、場所が少しずれていた。
小指と薬指の間から出血している。
さらに元を確認すると、「うげげげげ」指の間の股が裂けている。
パックリ中の肉が丸見えになるまで。

こりゃいかん。死ぬかもしれない。
バンドエイドじゃ直らないことくらい私でもわかる。
行きつけの病院に電話すると医者が不在だという。
これがあの有名な患者たらいまわしか、テレビ局呼ぶぞ、と怒鳴りかけたら、ちゃんと近くの病院とそこの電話番号まで教えてくれた。

タクシーですっ飛んで行って、受付で「大変です。股が裂けました」と訴えたが、美人受付嬢は落ち着いている。
「どこのですか」

診察室に通されて身を任せると、
「おお、きれいに裂けてますね。どうしました?」
「いや、猫と遊んでて...」
「..........」
50のオヤジが平日から猫と遊んでて指の股を裂いたのである。
もっとちゃんと聞いてくれないと、逆に恥ずかしさは増してくる。

すぐに縫ってくれた。6針。
「きれいにスパッと裂けてますから、多分そんなに時間かからないと思いますよ」
「先生。普通裂けますか?」
「普通裂けませんね」
「インドに行くんですが大丈夫でしょうか」
「インド?何しに」
「いや、ちょっと」
「3週間くらいはみたほうがいいですね」
よし、ちょうど3週間。問題なし。

実際3週間後には痛みは残っていたが、
デリーに向かう中国国際航空の機上の人となっていた。

こちらの先生、時々聞かなくてもいいでしょう、ということを聞くが、さっぱりしていて気に入ったのでそれ以来ずっとお世話になっている。
指の股を裂いた方がいたらご連絡ください。