左手が
泳ぎに行って、サウナで一汗かいているときに気がついた。
私の手の甲は左手の方が黒い。日に焼けている。
私は何故かは知らねどもきわめて日に焼けやすい体質の持ち主である。メラニン色素がやたら多いんですね。真冬でも晴れてればどんどん日焼けするので、皆さんに説明するのが大変面倒。
「お、大倉さん、どこかに行ってきたんですか」
「なんで」
「真っ黒ですよ。南の島?ゴルフ?」
行かねーんだよ。
南の島には。
ゴルフもやんない。
「私の場合は歩いているだけで日に焼けるんです」
「あらー、うらやましいですね」
うらやましがられるようなことではないが、もう何百回こういう会話を交わしたかわからないんで、テへって顔をする。そうすると相手も安心するようである。
一度日焼けした場所はいつまでも色が落ちないんで、私の身体は3重のミルフィーユ構造となっている。
大昔にカンボジアで泳いだ時に逆に目立つようになってしまった水泳パンツに覆われていた人並みに白い部分。ここが日焼けしている人はどういう人なんだろうと悩む。見たことないけど。
逆に黒いのが顔と頭と手である。
ここは年中黒い。
その中間がカンボジアで日焼けした名残の薄黒い全身。
本当の私の身体の色を見たい人はこっそり耳元でささやいてください。
一晩考えてお答えします。
そういうことで色が黒いことは納得いただけたかと思うが、サウナで気が付いたことの説明になっていない。
最初は「そうか、ゴルフで片手に手袋しているからだな」と妄想してしまったが、前述の通りゴルフやらないんだよ。その上ゴルフで手袋するのは左手じゃん。私の手は左手の方が黒いんだよ。
「車を運転するからかな」
運転するけど何時間も走らせることなんてあり得ない、運転好きじゃないもん。両国のラーメン屋か錦糸町のヨドバシカメラに行くときくらいである。あとはせいぜい10分の距離。
で、またよく考えてみたら、焼けるとすると右手じゃん。左ハンドルの車なんかアメリカに半年いたとき以外運転したことがない。
いくら考えても左手だけが日焼けしている理由が見つからない。
カメラを構えるからというのも理屈に合わない。
どちらかと言えば焼けるのは右手である。
左手はカメラの影に隠れている。
最初は変なの、とちょっとおもしろがっていただけなんだが、私の中でこの疑念はどんどん大きくなってしまい、もしかしたら自分で知らない間におかしなことでもしているんじゃないかと不安になってきた。
私に限って、と親バカのまねをしてみたが自分のことなんでその悩みは必要以上に大きい。
何があったんだろう。
生まれつきか?
「この子は生まれつき左手が黒いんよ」と親から聞いたことはない。
無関心だった?
わからない。
どうしてサウナで気が付いたりしてしまったんだろうか。
幸せな日々だったのに。
一応写真撮りましたので見ていただきたいが、何せ微妙なところなんでわかりにくいかもしれないが、今こうしてこれを書きながら何度も両手を見比べてきたが、やはり明らかに左手の方が黒い。