オーム・シャンティ・オームがやってくる

皆様、いよいよお待ちかねの大ヒットインド映画「オーム・シャンティ・オーム」が明日公開でございます。
ありがたや。生きててよかった。死ぬ前にもう一度見られるとは思わなかった。

「インド映画はノリだけじゃない」という記事が新聞の文化面に掲載されたりして、もう一度「本物の」インド映画を見直そう、という風潮がございます。
それはそれで結構でございます。
是非そういう映画にもお出かけください。
私もインドで買ってきた踊りのない映画をよく見ております。
それはそれで確実にアリです。

しかし、この「オーム・シャンティ・オーム」はエンターテインメントのの王道をまっしぐらのイケメン、超美女、恋愛、死、裏切り、歌、踊り、コメディがぎゅうぎゅう詰めになった映画でございます。
四の五の言う前に見とけって。

私は2007年、この映画の公開前にインドに入り、コチでちょうど公開となった。
公開される前から映画の挿入歌は馬鹿あたりしていて、ガキは全員このノリのいい曲を歩きながら歌っているもんだから、もう我慢できない。

私は逃げも隠れもしないインド映画狂である。
イギリスにはインド人が多いので、よくインド映画が公開されていた。
面白そうでも、つまんなそうでも気が付いた映画にはすべて足を運んだ。
で、本当に面白いものとどうして作ったと檄怒りするようなものがテレコでかかっていた。
そんなもんでしょ、映画って。
そんな人間が久しぶりにインドをぶらぶらしてるんだから、疲れりゃ映画、と決まってんだよ。

あちこちで中ヒット程度の映画を見ながら東海岸を南下していたのだが、とうとうこの映画の公開日がやってきた。早めに映画館でチケットを購入して、と本当に早すぎんじゃねーの、という時間に映画館に到着したら暴動が起きていた。
誰も殴り合っちゃいないんだけど、映画館が開いていないので待っている連中が興奮して大声で歌を歌い、踊りまくっている。チケットは、ない。とっくに売り切れている。くー、甘かったぜ。他の映画じゃこんなことにはならないんだよ。

どうする、俺。
呆然とその騒ぎを見ていたらおじさんが(私もおじさんだが私には私よりおじさんに見えた)「おい、チケット欲しいんだろ」と私を事務所に引っ張っていく。
この際、ダフ屋でもなんでも問題ない。チケットになら10倍までは払うぞ、と張り切っていたら「はい」と高い席ながらプレミアムなしのチケットを売ってくれた。当時のレートで120円。残り少ないチケットを髭ボウボウのハゲ親父に売ってくれたんだよ。
南インドの人は本当に優しい。
私を連れてきてくれたおじさんはいつの間にかいなくなっていた。
こんなことでまたインドにコロッとやられてしまう私である。

若いインド人と一緒にキャーキャー言いながら映画館にがんがん人の背中を押しながら突撃した。
指定席なのでゆっくりでいいのにこういう時は気がはやるね。
ちなみに私の知る限り指定席制でないインドの映画館は存在しない。これは30年前から変わっていない。
映画先進国なのだよ。

南インドの映画と北インドの映画は言葉はもちろん全く異なるが、主人公の顔、ストーリーの展開等々全く違う。コチはケララ州の州都で言語はマラヤーラム語である。グルジア文字に凄く似ていると思うのだが、その話は別の機会に。
しかし、全インドでくまなくスーパーヒーローとして長年君臨しているシャー・ルク・カーンは別次元の存在。彼はイスラム教徒でありながら現在の地位まで上り詰めた。
宗教を感じさせない映画にも出ているが、普段はヒンズー教徒の役で出演している。
インドの俳優には実はイスラム教徒も多い。
何かと宗教問題で揺れる国だが、こんなに緩やかなところがあることも知っておいていただければ幸いである。

さて、映画が始まるかな、という時間になると映画館は地響きで揺れる。倒壊するんじゃなかろうかと心配になる。「シャールク!シャールク!」のシュプレキコールとともに床を蹴るからである。止めて欲しい。
で、始まんないと静かになる。で、また騒ぐ、の繰り返しが何回かあってバーンと予告編が始まるとシュンとするが、本編になるとお祭りだ。祭りだ、祭りだ、塩まいておくれ。バケツの水をぶちまけても誰も文句言わない雰囲気だぞ。誰か本当にやってみてはどうだ。

映画の中身は見りゃわかるので、ここじゃ触れないよ。
解説読んで見に行くような映画じゃないんだよ。
純粋に楽しみたい人が行く映画なんだよ。

私はかつてたくさんのインド人女優と浮き名を流してきた気になっているが、この映画で颯爽と登場したディーピカー・パードゥコーンさんは特別だな。日本で大ヒットさせて来日した際にはこれからの一生を捧げ付き人にしてもらうことにしている。
必ずこのハゲ親父、お役に立ちます。

みんなは映画だけ楽しんできてね。

このクリップ、前にも紹介した気がするけど、これがこの映画の肝だから気分を盛り上げて行ってください。