インドは危険か

15日、インド中央部のマディアプラデシュ州ダティアでスイス人夫婦が森林地帯でテントを張って野宿していたところ襲われ、女性は集団レイプをされ所持品を奪われるという事件がありました。
犯人グループと覚しき男たち20人が拘束されている、というえらくスピーディな事件解決に向かっているようです。間違ってなければいいのだけど。
今回は外国人が被害に遭っているということで、おそらく早急に犯人を特定して処罰するという方針が徹底しているのでしょう。

インドでは女性に対する暴行事件が繰り返されており、最近でも報道されただけでも何件も記憶にあると思います。ここでちょっと困ったな、と私は思ってしまいます

確かにインドでは欧米に比べれば女性の地位は低く、レイプだけではなく、結婚の際の持参金が少ないと殺されたり、亭主が亡くなると無理矢理火葬の火の中に押し込まれ殺されるという本当にそんなことがあるのかということも起きています。
そういう一連の女性蔑視の風潮の中、インド国内でも前回のレイプ殺人事件を期に大きなデモが続いています。こんなことでもないと世論が盛り上がらないということ自体問題だと思いますが、インドはこのような悲惨な事件が頻発し、とても旅には適さない場所だと思われるのは困るのであります。

インド政界では女性は決して弱い存在ではありません。
インディラ・ガンディー元首相をはじめ、それに連なるソニア・ガンディー現国民会議総裁、2007年から2012年まで大統領を務めたモハンマド・ハージト・アンサーリーも女性です。
暗殺されてしまいましたが、映画、本でも著名なプーラン・デヴィは年上の亭主からさんざん虐待を受けたのち、盗賊に加わり、頭目にまで上り詰め、その後国会議員に転身したという非常に力強い女性であり、インドでは大変な人気がありました。

文庫 女盗賊プーラン 上 (草思社文庫)

文庫 女盗賊プーラン 上 (草思社文庫)

こういう事例を挙げなければならないほど、やはり女性の地位は低いということも言えますが、女性すべてがひどい目に遭っているというわけではありません。

実際、インドを旅していると一人で長期間歩き回っている日本人女性、宿の経営を始めた若い韓国人女性、ばかでかい荷物を抱えた白人女性などによく出会います。嫌なこともあったでしょうが、大変軽やかにインドの旅を楽しんでいます。嫌なことは男でも同じように出会うので、むしろ女性のたくましさに感心するほどです。
ただ、親切な安宿の主人が、夜になると「結婚しよう」と迫ってくるとういう阿呆になる、という話はよく聞きます。インド人男性は様々な理由で性のはけ口が閉ざされていることが多いので、そんなことも不思議ではありません。もちろん許しがたいことではありますが。

学生時代インドに行ったとき、一部のルートを日本人女性と回ったことがあります。私の友人と3人ですからおかしな誤解はしないでください。
そのときラージギルからパトナに向かうバスに乗るつもりで、バス停なぞ何もないところで何時間も待っていたらどこにも隙間のないほど人でふくれあがったおんぼろバスがやって来ました。これは無理だ、とあきらめたつもりだったのですが、インド人の車掌は荷物をどんどんバスの上に放り上げていきます。で、私と友人は屋根の上の乗客となりました。一緒にいた女性はというと、どこをどうすれば隙間ができるのかわかりませんが、「女性はバスの中」と優遇され、ちゃんと席を作ってもらって座ってパトナまで行き着きました。
あとで聞くと「あんまり狭いんで、私も屋根の上がよかった」と話していましたが、ま、親切にしてもらったということで本来文句を言うことではありません。バスの中で触られたり、「結婚しよう」と迫られたりはしなかったそうです。

ともあれ、女性一人で旅をしている人はおそらく部屋のセキュリティチェックを厳密に行っているでしょうし、自然と身の危険を察知する行動を取っているはずです。

私はインドで身に危険を感じたことが一度もないので的確な助言がしにくいのですが、旅に出て行うべき身を守るための「技」は持っておかなければなりません。何もこれはインドに限ったことではなく、どこの国に行っても同じです。いわゆる先進国でも同様の危険はあると考えておかなければなりません。

さて、レイプ被害に遭った女性とそのご主人は非常にお気の毒で言葉もありませんが、インドの新聞「The Hindu Times」を読んでもその時の状況がはっきりとわかりません。ただ、冒頭の日本での報道と同様、近くの村でテントを張ったのではなく、ジャングルの中で野宿をしていたということのようです。危険だと判断したパキスタンには行かず、2月半ばにムンバイからインドに入り、自転車で北東に移動していたということ。
村を避けたことに意図があったのかどうかわかりませんが、既に気温が上がっているはずのインドですから、野宿で充分と考えたのかもしれません。軽々しくどう考えるか言えませんが、どうしてその場所で、と不思議に思えてしまいます。

インドは安全だ、と言い切るつもりはありませんが、必要以上に警戒し、絶対に行くことはあり得ない国と思う方がいたらとても残念なので、あえてこの話題を取り上げました。
繰り返しますが、旅の最中は最低限の注意は必要です。
どの国でも同じです。

インド最大の聖地バナーラス。ガンジス川のガートのそば。
最初はびびる人がいるかもしれないけど、安全です。