愛は成就する

先日コンニャク愛について書いたところ、その日のうちに仕事仲間のアートディレクターから電話がかかってきた。

「私、コンニャク嫌いなんです」
「どこか頭打ったか」
「『コンニャク嫌いな人間はいない』って書いてたじゃないですか」
「俺は『コンニャクはちょっと』という人間はいないと思うよ、と書いただけ」
「同じじゃないですか」
「同じだな」
「私コンニャクダメなんです」
「なんで」
「なんかよくわかんないじゃないですか」
「わかんなくねーだろ。歯ごたえがあって、日本じゃ昔から愛されてるんだよ」
「そうでしょ。歯ごたえだけじゃないですか。味が無いじゃないですか。意味の無い食べ物ですよね」
「おまえ食いもんを理屈で食ってんのか」
「知りませんよ、そんなこと」
「ああ、おいしいなあ、でいいじゃねーか」
「ああ、嫌だな、と思うんですよ」
「わかった。おまえ一生コンニャク食わんでよし」
「ところがですね。親戚にコンニャク屋がいるんですよ」
「すごいじゃん」
「そうなんですよ」
「お前、もしかしたらやっぱり好きなの」
「嫌いです」
「で、俺はどうすればいいの」
「コンニャク屋やめちゃったんですよ。もう歳だからって」
「もったいない」
「すごくうまいって評判のコンニャク屋だったんです」
「俺に継げってことか」
「違います。今はおいしいって言ってくれる人だけに趣味で作ってるんです」
「で、お前は嫌いなのね」
「嫌いです」
「親戚の人に申し訳ないね」
「それはいいんです。で、明日から実家に帰るんですけど、そのコンニャクがあるんです」
「早く言えよ。お前、最近評判いいよ」
「誰にですか」
「廣沢とか」
「毎週会ってますよ」
「だろ。いい仕事してるって」
「ほめられるのは嬉しいです」
「コンニャクがあるともっとほめると思うな」
「だから電話したんですよ。コンニャクいります?」
「あるだけくれ」
「奢ってください」
「いろいろ物入りで金はない」
「あの汚い焼き鳥屋でいいです」
「じゃ、お願いね」

という会話があって、昨日そのコンニャクが届いた。
商売で作ってるんじゃないから、型に入れてないのがすごく新鮮。
刺身と豚汁で食った。
55年生きてきてこんなにうまいコンニャクを初めて食った。
ブログ書いてて初めて具体的にいいことがあった。