ボクたちの交換日記

交換日記って顔がひからびるほど恥ずかしくない?
もうお肌がガサガサでしょ。

この映画は試写に行くべきかどうか悩みに悩んだ。あの恥ずかしい思い出が蘇って来たらもう生きていけない。特に人様にご迷惑をおかけしたわけでもないし、不純な行為をともなっっていたわけじゃないんで堂々としてればいいんだけど、やっぱりなあ。
そもそもそんなに恥ずかしいんなら、こんなところでわざわざ告白しなくていいんだが、青春の記録とでも言うんですかね、こんなハゲおじさんにもキラッとしたことがあったんだよ、と誰にというわけでなくお話ししときたいんでしょう。
娘に読まれたらもう合わす顔がないんで黙っていていただきたい。

告白する前によく考えてみたら、あの交換日記というシステムは携帯電話、メール、ラインなどというものがなくて、気になる子に学校以外で話しかけるとすると黒電話しかなかったからだ。黒電話の場合は本人が都合よく出てくれることなど期待できないし、そんな勇気なんかあるわけがない。オヤジが出て来て「娘に何の用だ」なんて凄まれたらすぐ切るもんな。

じゃ、学校で話せばいいじゃんとか思うやつは当時の田舎を知らない。
田舎じゃ男子と女子は学校で仲良くお話してはならないという沈黙のルールがあったんだよ。それを破ると「ほーれほれ」とグイグイ横腹を肘で突いてくるドアホがいるし、持てないドアホはさらに始末が悪く、いきなり相手に向けてドーンとぶつけるよう体当たりしてくる。阿呆ばっかし。私もそんな阿呆の一人だったんだけど。

下関で同窓会に出たりすると、同級生だった女性の方々が「もう、娘なんか男の子と手をつないで帰ってくるんよ。信じられんやろ」と訴えてくる。訴えられてもな。
しかし、田舎もんは田舎もんの矜持を持って手をつないで歩いてはならん、ということにしといた方がよくないすか。東京は不良ばっかりということにしときましょうや。
田舎には手をつなぐようなことを考えたこともない純情な青少年しかいないという幻想を残しとこうぜ。
なぜ?というのはなしにしよう。ただそう思っただけで理由なんかないもん。

そんな私に交換日記をしようと友人を介して申し込んで来た女子がいたから驚いた。
舞い上がったね。交換日記だよ。何書くんだかわからないでしょ。日記じゃだめなんでしょ。交換すべきことを書かないといかんのでしょ。今日は遠足に行きました、じゃだめだ。今日のご飯はカレーでした、でもだめだ。と悩んだわけだから、結局私はその交換日記を始めてしまったわけだ。
うわっ、今すごいこと書いてないすか。
成り行きというものがあるんだよ。責めないでいただきたい。

あちらの方が最初に何ごとか書いてきてくれました。
私は何を書いていいのかパニックになり、当時私がかわいがっていた猫、トラのノミを10匹ほど潰して、「うちにはこんなのを持っている猫と犬がいます」とノミを10匹そのままノートにセロテープで貼って返しました。
その返事がどうだったか思い出せないが、何とも触れていなかった可能性が高い。
阿呆はノミを貼って返しました。
2ヶ月くらい続けていたんだけど、あちらが「あんまり面白くない」とおっしゃって止めになったんじゃないだろうか。
止めてよかったと思いますよ。あのまま続けていたら、もっととんでもない物を貼付けていたかもしれない。何が受けただろう。

というバカ話を思い出してしまったので、この試写に行くのをためらったんです。

この映画は内村光良さんの監督・脚本作品。
売れないお笑いコンビが交換日記を続けながらなんとか一山乗り越えようとするお話です。お笑い映画を作るのはそんなに難しくないんだけど、お笑いをテーマにした映画はとても難しい、と思う。内村さんだから作れたんでしょう。嘘が感じられないから、そのまま感情移入できる。で、その交換日記の結果はどうだったんでしょう、と締めくくりたいんだけど、チラシに「交換日記をしなければ、解散せずにすんだのかもしれない・・・。」なんて書いてるんで、ダメじゃん。

それでもちょっとおセンチな気分になって帰りました。
いい映画でした。
みんな素直な気持ちになって、見に行こうぜ。
間違っても中学生男女の交換日記と勘違いして行かないように。

ふふ。実家の近く。つまり通った中学校の近くでもある。