自衛するアメリカ人

アメリカでの銃規制はまたしても失敗に終わり、あの国は狂ってんじゃないか、と大多数の日本人が感じつつ、日本を守るためにはアメリカにいてもらわなきゃと信じているのが謎であります。

アメリカの歴史は血で塗られています。
アメリカは独立戦争南北戦争、領土拡張戦争、西部開拓により、多くの市民、移民、奴隷、ネイティブアメリカンの犠牲の上に成り立ちました。
独立戦争南北戦争には別の面もあったんでしょうが、領土拡張時は自国民の保護を名目にあくまでも「自衛のため」の戦いと言い張って、ダーっと攻め込んで、これはわしのもんねとしてしまいました。これは関東軍がまねをしました。
元々アメリカなんて東海岸にへばりつくような国だったのが、西へ西へと新天地を求め、ネイティブアメリカンが「やめてくれよー」と待ったをかけると、「大変だ。黄色い連中が襲ってきた」と「自衛のため」に殺しまくりました。
当時はテロリストなんて言葉は使われていなかったんだろうが、ネイティブアメリカンのテロに屈しなかったのがアメリカだ。
いきなり白い肌の連中に洪水のように押し寄せられて、「待てよ」ともの申したネイティブアメリカンの側からすると、やたら銃をぶっ放し、自分たちの土地に次々と町を作って、「近寄ったらぶっ殺す」と追いやられたんだから、テロだったんだかただの虐殺だったんだかさっぱりわからない。
勝ったもん勝ち、多いもの勝ちの原則で今のアメリカは作られました。

すべては「自衛のため」だったそうです。

おかげさまで「自衛のため」であればどんなことをしてもかまわないというのが、アメリカの大義となっております。
アメリカ国民、議員は国の方針に忠実で、常に自衛のために銃を自由に持てるよう努力を怠りません。
たいしたもんだ。
どれだけ多くのアメリカ市民が銃の犠牲になっても信念は揺るがない。
(すみません。銃規制を支持している方も大勢いらっしゃることは存じ上げていますが、わかりやすくまとめております)

私が危惧しておりますのは、アメリカは世界の警察官となっていましたが、あくまでも武力行使に及んだ出来事は「自衛のため」だったということでございます。アフガニスタン侵攻はテロからの「自衛」でした。イラク戦争も「大量破壊兵器」をいつ使用するかわからないとんでもない国を征伐する「自衛」であります。

常にアメリカの戦争、武力行使は正当な「自衛」のための行為でございます。
日本では集団自衛権を認めるということで与党、野党、足並みを揃えつつありますが、これはアメリカの「自衛」に日本がつきあうということですね。
日本を守ってくれる、というアメリカはアフガン、イラクに日本の基地から戦闘機をばんばん飛ばし、軍艦を送りました。
直接は戦闘地には行っていない。戦闘地以外に向かった軍隊がその後どこに行こうと日本国は関知しない、ということで何となく収まっていますが、これ実はおかしいんですね。
日米安保では在日米軍が軍事行動を行う場合は極東条項と事前協議に縛られております。
極東条項とはあくまでも極東での国際平和、安全の維持に寄与するために日本にある基地使用が認められるものです。
ですから、アフガン、イラクには在日米軍基地からは軍は送れません。
だから、一旦日本からどこに行ったかわからない軍が、その後戦地に赴いたとしても知ったこっちゃないという理屈が生まれたんですね。

あの頃はそんなことをグチャグチャ言っている場合じゃなかった、という強行突破を試みる議員さんも多かろうと推測いたしますが、結果はアフガン、イラク情勢は何がどうなるのかわからないまま、「罪のない市民」を大量に「間違い」で殺してしまい、「犯人」は誰なのか問われないままアメリカ軍は撤退することになりました。
ボストンのテロで亡くなった方々は誠にお気の毒でありますが、アフガン、イラクで亡くなった多くの市民に対しては「仕方ないじゃん」で終わらせているのが、集団自衛権を一緒に行使しようというアメリカという国であります。

自衛というのは誠に便利な言葉でございます。
何だって自衛にできちゃう。
自衛隊」という言葉がすっかり根付いた日本は自衛という言葉には寛容ですね。
国防軍」はもっと嫌だけど、自衛にももっと神経質になった方がいいんじゃありませんこと。
そのうち日本も自衛のために市民に銃を売ることのできる規制緩和を求められるんじゃないか、というのは私の妄想でしょうかね。

ちなみに国連には国連憲章というものがあります。
第一条にはこうあります。

国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によつて且つ正義及び国際法の原則に従つて実現すること。

これは解釈によってはガンガンやってよし、という具合にも読めます。

でも第二条はこう書いてあります。

すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。

「国連を妄信してはならない」という議論がありますが、安全保障理事会決議によって戦争の大義を得ているのもアメリカであります。

アメリカの銃規制失敗からここまで引っ張るのは無理がある、とお考えの方も多かろうと思います。
でも私の小さな脳みそで煮詰めると、まとまりはありませんが、いろいろ心配になるんですよ。

ベトナムサイゴン無血開城した時に翻った一星紅旗。
あの戦争もなんだったんでしょう。