陰謀説とはなんなのか

私が昨日書いたのは、ボストンのテロ事件には不可解な点がいくつかあるということだけで、陰謀であると決めつけていたわけではない。ただ、ここからどのような展開があるのか非常に興味がある、という趣旨だったのだが、アメリカを中心にいわゆる「陰謀説」が凄まじい勢いで増殖中である。

FBでもアメリカ人の書いたものが日本語に翻訳されてアップされ始めたし、YouTubeでも映像を繰り返し流しつつ不可解な部分にマークをつけながらやや興奮気味に解説しているものもある。
boston bombing conspiracy と検索に打ち込むと凄まじい数のページがヒットする。
すべてに目を通したわけではないが、陰謀説も様々で、飛躍しすぎと思えるもの、よくここまで調べられたもんだと感心するもの、よくわからないとしか言いようのないものが見事に並んでいて、こうなってくると何を信じるべきか自信がなくなってしまう。

そういう陰謀説に対し、なぜそんな馬鹿馬鹿しい話をでっち上げて、被害にあった人たちに同情を寄せないのかという激しいバッシングも起きている。
陰謀説の中では両足をなくした男性についての記述が多く、写真を載せ、男性の身元についてまで詳しく書かれたものまである。写真は極めて凄惨なものであるため、日本のテレビでは放送していないのではないかと思うが、私が見た写真はよく見ると確かに不自然だと思わざるを得ない点がある。
しかし、私が不自然だと感じただけでは何の証拠にもならない。
問題はこれから不自然だと思ったことに付いて情報開示は行われないだろうということである。

日本で災害・犯罪被害者の家族にマスコミが殺到してマイクを突きつけている様子は醜悪であるが、今回の現場で撮影された写真・ビデオはいくつかの疑問を差し挟む余地のあるものが多く、追跡取材が必要だと判断するマスコミがいてもおかしくない。

どういう取材を続けるべきなのか、どこまで取材が可能なのか、プライバシーの問題は担保されるのか、あらゆる困難が予想されるが、当局の発表をそのまま記事にすることがジャーナリズムであるはずがない。
しかし、そのような報道しか目にしなければ、何らかの裏があるかもしれないという疑念はそれ以上大きくならない。
しばらくすると忘れられてしまう。

イラク戦争前にイラク高官とアルカイダがどこどこで接触をしており彼らの密接な関係は明白だと堂々とアメリカ政府が発表し、大量破壊兵器を間違いなくイラク保有しているという与太話を大部分のアメリカ国民が信用しきっていたという事実を忘れてはならない。もうひとつ言うならば、あのときには政府関係者が偽装文書まで作成していた。

今ではかなりの数のアメリカ国民が9.11で起きたことのすべてを信用することはできない、と考えているが、もはやあの事件は既成事実としてしか扱われなくなっており、山のようにある疑問点が明らかにされることはない。

そのためか、アメリカでは何かが起きるたびに陰謀説を唱える人間が必ず出て来る。
そして、おかしな奴ということでけりがつけられてしまう。
政府当局が発表することにでっち上げはこれまでもたびたびあったが、それは陰謀とは呼ばない。
一般の人間が当局の発表はおかしいと声を上げるとそれは陰謀説ということになる。

当面私のモヤモヤが消えてしまうことはなさそうである。