俺はまだ本気を出してないだけ

むずがゆい、どころじゃない。
心が痛い。
俺のことじゃないか、と映画館で口を閉じて絶叫していた。

当然この原作マンガは知っている。
でもな、実写化されてどんどん主人公は俺に近くなっている。

40過ぎて会社を突然辞め、何もする気にならず毎日テレビゲーム。
俺は40で辞めちゃったからこいつよりたちが悪い。
テレビゲームはやんないからそこはよくわからないけど。
やったー、とバッグ担いでネパールに行って、またネパール、ミャンマーベトナムに行っちゃったんだよ。
何がやったー、だっつーの。
現実見たくなかっただけじゃねーの。
1997年だからとうに不況に突入してた時代じゃん。
ろくに仕事も探さないで、「フォー、うめー」だもん。

主人公の名前が大黒(おおぐろ)。
最初は俺が呼ばれてんのか、と思っちゃったじゃん。
びびったぜ。

いつかは仕事しなきゃなー、本気出さなきゃなー、と本人は気がついてんだよ。
でも本気の出し方がわかんないんだよ。

あれ、でも、みんなそんなに本気出しちゃってる?
出してるな。
ところで本気ってどういうんだっけ。
一所懸命に働いてると本気出してるんだっけ。
そうだよ。
ちゃんと働くってことだよ。
働くことが本気出してんだっけ。
そうだって言ってんじゃん。

ラーメン屋とかどうかな。
好きだってことがあると本気になれるな。
それが甘いっつーの。
でも、そんなに悪いか。

てなことをずーっと映画見ながら考えていた55歳。もうすぐ56。

この映画は太宰の「人間失格」と並ぶ名作で、見た人間を一度は地獄に突き落とす怖い映画。
ゲラゲラ笑いながら自分を傷つける具合にできている。
見てみろよ。
何か感じるから。

本日の言葉遣い失礼しました。

ネパールの山の上、ナガルコット。
このときは頭がきれーにすっからかんだったな。