夏のアバンチュール

そういう体験がないから一度どんなもんか知りたいな、とずっとこの40年くらいお祈りしているんだけど、ないものはないとはっきりしているのが世の中だ。

新聞掲載されていた頃のサザエさんで、若いカップルがお年寄りに席を譲ろうとしたら「いいからいいから、若い人はひと夏のアバンチュールでお疲れでしょう」と平気で立っていた、というのがありました。
よくそんなこと覚えてると自分でも思います。
このアバンチュールっていうのがわからなかったんだけど、何かいいことなんだろう、しかも疲れるような、という察しはついた。

で、アバンチュールってなんだっけと今辞書で調べてみると「冒険味をおびた恋愛。恋の火遊び」となっている。フランス語ですね。しかし、この意味がまたよく分からんね。
どういうことをすると恋愛が冒険になるんだろうか。
火遊びということはアッチッチということになるんだろうね。それでやめると「火遊びだったんだよな」とタバコ吹かしたりして。

かっこいいんだか悪いんだかよくわかりませんな。
しかし、どのようなきっかけでアバンチュールは始まるのかしら。
「ねえねえ、かき氷食べない?」とか海でやんの?
居酒屋で隣のグループの女性に話しかけたりしたりして。
「ラーメンの汁が飛んでますよ」と教えてあげるっていうのもありかも。

先日、ある駅でスタイル抜群、背の高いサングラスかけたお嬢さんに「大倉さん」と声をかけられて、飛び上がるくらい驚いた。
「大倉さんですよね」
「はい、でも、あの、私はただのハゲですが」
名前を名乗られても皆目見当がつかない。
何度もそんなことを繰り返しているうち、私も落ち着きを取り戻し「な〜んだ」ということになった。
美人に声をかけられると上下前後左右さえわからなくなるんで、わかりやすい形で声をかけてくださいね。
アバンチュールかと思っちゃうから。

またしても夏が終わる。
盆が終わりゃみんな真面目にまた働くんだ。
56歳のハゲにはいずれにしても関係ないことなんだけど、そんなことが人生に一度くらいあって欲しいと突然今朝思いました。

夏のアバンチュールはまた来年までお預けだ。
秋のアバンチュールとか冬のアバンチュールってのはないな。
やめといた方がいいですよ。

どうしてこんなこと書いたんだろう。

やはりアバンチュールは浜辺でしょ。