(株)貧困大国アメリカ

先日カナダでGM食品(遺伝子組み換え食品)についてカナダで反対運動をしている14歳の少女がテレビ局に呼ばれて、二人の司会、インタビュアーから責め立てられるという画像を見つけた。
局側の姿勢は最初から明らかで、14歳の少女の活動家なんかどうせ親から入れ知恵されて付け焼き刃の知識で騒いでいるだけだから、GM食品に反対をしている連中を黙らせるにはちょうどいい機会、完膚なきまでに潰してやろう、というものだった。

ところが思惑ははずれるどころ、完全に局側の自爆となってしまった。
少女は上から押さえ込むように潰しにくる威圧的な男に実に冷静に対応し、話をさせない「理性的な大人」の攻撃を受け止めつつ、あんまりバカバカしい突っ込みをかわし、どこの誰が見ても潰されたのはインタビュアー、局側だったことは明白だった。
あまりにも局側にとっては醜態だったようで、おかしなところで「今日はどうもありがとう」なんちゃって、話を打ち切ってしまった。

洗脳をされているのはインタビュアーだったのね、という印象だけが残る結果となりました。
英語でのものなので、わかりにくいところもあると思いますが、少女の受け答えを見ているだけでも様子がわかりますから興味のある方は以下のページをご覧ください。
http://www.prdaily.com/Main/Articles/5_ways_a_14yearold_crushed_an_arrogant_interviewer_15006.aspx

グローバル化された経済は既に世界を覆い尽くそうとしている。
特に金融についてはマネーは国境を何の障害もなく飛び越え、共産国新興国、貧困国までも席巻し、「市場」が国を超える力を持ってしまい、波がくればそれに抗う手段を持っていないのが実情である。

「市場の声を聞け」という言葉が一時飛び交っていたが、その「市場」とは一体なんだったのか。
「市民」のニュアンスを残すこの言葉は実に曖昧で、あたかも市民が動かしているのが「市場」だと勘違いしてしまいそうになっていた。
あえて間違いも含めて乱暴に言えば、市場は1%の人間が支配している世界である。
アメリカが支配しているのではない。
アメリカを地場として巨大な力を持つに至った一握りの企業がその支配力をこの20年で圧倒的なものに変えてしまった。
まずそういう企業の食い物にされたのがアメリカという国自身である。
アメリカはもはや他国がうらやむような自由で豊かで希望にあふれる国ではない。

堤未果さんは多くの本を上梓されているが、2008年の「ルポ貧困大国アメリカ」続いて「ルポ貧困大国アメリカ2」、そして今年発売された「(株)貧困大国アメリカ」で私たちが見落としているアメリカの実情について綿密な取材をもとに明らかにしてくれた。

「BOOK BAR」でも何冊か紹介させていただいたが、この3冊は出色のルポルタージュである。
もちろん反論のある方も多くいるであろうが、これまでこれらの本の内容に正面から議論を挑んだ人を私は知らない。
不勉強で知らないだけかもしれないが。
もしあれば是非教えてください。

最新刊の「(株)貧困大国アメリカ」では半分以上をGM食品を含む食の問題に焦点を当てている。
アグリビジネスを展開しているモンサント等の大企業がアメリカをいかに食い尽くしているか、彼らがアメリカからどのような手口で世界制覇に動いているのかが詳細に渡ってルポされている。

一読されることを強くお勧めします。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)