ブラックジャックによろしく

こういうマンガがあることは知っていて、大変評判が良かったということは聞いていたんですが、そうなると私が読んでわざわざBOOK BARで紹介することもないね、と思い、読まないでおくことになるというのは悲しき職業病。

誰も知らない本を探し出して、なんてことはないんだけど、あまり何度も同じ作家の作品は取り上げないとか、ジャンルはできるだけ幅広くとか考えますよ。
紹介する本の選択はすべて杏ちゃんと私に委ねられているんで、かなりプレッシャーはあります。
だから、この悩み、と申しますか、肝が冷える状況は杏ちゃんと私にしかわかりません。
ふふふ。

私が「iPad mini買ったんだよ〜」とスタジオに持って行きました。
「こんなに便利なんですよ」と皆様に勧めていただいていたにもかかわらず、かたくなに拒んでいたので、「いまさら」とやや冷ややかな視線を感じたんだけど、まあ、こういう買い物は10年に一度くらいなんで、少し嬉しくなるじゃん。

旅に出るときの一番大きな悩みは本なのよ。
本は重い。
私は少なくとも英語のペーパーバックも含めて6、7冊は持って行くんだけど、全部文庫本にしますよね。
他の人は知らないけど、1ヵ月以上フラフラしているんだから最低そのくらいは必要になります。
できるだけ普段読まないような、古典とか、時間がかかりそうな難解なものが多いですね。
厚いです。
スラスラ読めちゃうとラオスやインドの奥地で困るでしょ。
英語の本も見つかんないところもあるんですよ。

問題は文庫本はペーパーバックより重いということですな。
本当かと思うでしょ。
本当です。
370ページのペーパーバックは173g。
480ページの文庫本が251g。
文庫本の方がずっと小さいのに重い。
なんだ、文庫本6冊でも1.5キロじゃん、と思った君、甘い。
飛行機に預けられる荷物は20キロまでよ。
そのうちの1.5キロ持って行かれるととてもつらい。
今回はピーターの家でカレーを作ってやんなきゃいけないから、ハウスジャワカレー辛口の一番大きいのとか、いろいろあるのよ。

ということで、ここはやはり初電子書籍か、と思い悩んでいるわけよ。
でも、電子書籍で本当に読めるんだろうか、あー、読みにくいということになって、わざわざロンドン中心部まで高い日本語の本を買いにいくんじゃなかろうか、という心配がございました。
すると杏ちゃんが「マンガは電子書籍でよく読みますよ」と教えてくれました。
そうか、まずマンガで試してみよう。
で、どうにか電子書籍のアプリをダウンロードしてみたら名作「ブラックジャックによろしく」が「無料」で全巻読めるということがわかりました。
そういえばこの話題、ニュース番組に関わっていたときに聞いたことがあったような。
マンガは番組のマンガ特集の時以外ほとんど読まないんで、あまり頭に入ってなかったような。
昨晩遅く、全巻ダウンロードして、パラパラめくってみるか、と始めてみたところ、やめられない。
ページをめくんない本ってなんなんだよ、って決めつけてたんだけど、速い速い。
面白くて止まんない。
戻れる。
戻れる。
また進む。
人生みたいだな。

このマンガは素晴らしい。
現在の医療制度の矛盾をえぐりまくる。
そこに答えはないんだけど、生きている限り逃げることのできない医療について読めば考えざるを得なくなる。
毎回、病院に行って定期的な検査を受けるたびに「必要なのかね、これは」、大量の薬を受け取るたびに「これだけの薬を飲むことの方が恐いんだけど」と思ってたのよ。
この医療費はとても私の現在支払っている健康保険料の中で収まってないんだから、どなたさまかのお情けで「治療」させていただいているわけだ。
もちろん身体に何の異常もなかった頃はどなたかの役に立っていたんだろうけど、今は何とも申し訳ない気分。
じゃ、医者が全員大金持ちか?
看護師はあんなに苦労して資格を取るのにどうして辞めていくの?
医療問題の本質はどこにあるの?
医者の友人から「大倉、あの人に医療問題に取り組むように頼んでくれ」と真剣な顔して言われたことがあるんです。
頼めなかったんだけど、医療についてはあまりにも問題が多いことは実はよくわかっておりました。
これは日本に限ったことではありません。
日本独特の問題があることは事実だけど、イギリスでは誰でも無償で医療が受けられる制度は全くの嘘ではないけど、そのままに受け取ってもらってはとても困ります。
アメリカはどうか。
マイケル・ムーアの映画「シッコ」を観てね。
問題のない医療制度を完成させている国はありません。
再び、この問題に目を開かされた私である。

マンガの方がストレートに問題を突きつけるケースも多いけど、小説でもルポでも同じじゃないか?
ということで「ブラックジャックによろしく」のおかげで、今回はiPad miniに本を詰め込んで、一切現物を置いていく決心を固めた次第でございます。
実験だな。
どうなるかしら。

ただ、帰りはどっさりCDと本を買い込んで帰ってくることはほぼ間違いありません。

アルメニアは楽しかったんだけど、ここでは日本語の古本を見つけることはできません。
バックパックに本をギューギューに詰めて行ったんで、重くて泣きました。