イラク戦争の悪夢再び

えらい鼻息。
音が聞こえる。
フガフガいわせてカウボーイになったつもりなのか。

ホワイトハウスはががなり立てているのはこうだ。
「シリアで化学兵器が使用されたことは明白で、アサド政権が使用したことに疑いの余地はぼぼない」
「我々の見解では、シリア政府に非があることはほぼ間違いない」
「ほぼ」が大好きホワイトハウス

オバマ、ケリーはシリア政府軍がやったと口にはしていないが、ホワイトハウスの報道官がそう言ってんだからそう思ってるんでしょ。明日29日にも軍事介入も辞さないとまで明言しているんだから、どっちが使ったかわからないが、とりあえず巡航ミサイルをその辺りにぶち込んどこう、ってわけじゃないだろう。

国連安保理の決議なしにやっちゃうよ。やるときはやるよ、という姿勢だが、どこかで聞いたようなセリフである。
現在、国連調査団がシリア入りして調査中なんだが、その結果はまだ出ていない。
聞いても聞かなくても化学兵器は政府軍が使ったのは「ほぼ」間違いないんだから、何が悪い?ということか。

さて、ここで思い出して欲しい。
約4ヵ月前もシリアで化学兵器が使われた、という報道があり、当時の国連調査団のデルポンテ氏は「反政府軍が使ったという具体的な疑惑がある」と声明を出していた。
アメリカ、イギリスは当時も気分はもう戦争状態で、いつでもやるぜ、という前のめりの姿勢だったのがいつの間にかしぼんでいたことがあった。

言うまでもなくイラク戦争を始める前は「間違いなくイラク大量破壊兵器を保持している」と出鱈目な証拠を偽造して、乗り込んだのはアメリカ、イギリスである。
おかげさまで、イラクの混乱は治まる様子はなく、今に至ってもテロが頻発しており、アメリカ軍は引き上げた。

今回は「ほぼ」でミサイルを撃ち込むんだそうだ。
何度もこのブログで書いたが、シリア情勢は簡単に政府軍、反政府軍と分けられる状態ではない。
反政府軍は世俗派から過激派、または正体不明の軍事組織が入り交じっており、どこがなにをやっているのか正確な情報をつかむのはおそらく無理である。

もちろん化学兵器使用は許されないし、内戦の早期解決が図られるのは当然のことであるが、全く何の証拠もないままアメリカおよびその同盟国の軍事介入ということになれば、混乱に拍車をかけることは必死である。

ロシアは当初からの姿勢を崩しておらず、そのような状態になれば「国際法の甚だしい侵害」「西側の指導者からの声明は、査察の結果を待たずに、既に全てを決めていることを示唆している」と厳しく非難した上で、ロシアの軍事行動の可能性については排除している。
このケースではロシアの言い分は筋が通っている。

今回、国連調査団がダマスカス郊外へ疑惑解明のため向かった際に銃撃を受けた。
シリアの反体制派統一組織(というまとまったものがあるのかどうか極めて疑問だが)「国民連合」は「アサド政権側が、化学兵器使用を国連に悟られまいとして行ったことだ」と主張している。
私見であるが、政府軍がこの時点で調査団に極めて中途半端な銃撃を行うというのは非常に不自然である。
絶対に知られたくないのであれば、もっと激しい攻撃を加えているはずではなかろうか。
反政府軍側がやったという証拠もないが、それ以上の詮索は無駄なのでやめておく。

ちなみにイギリスのキャメロン首相はイラク戦争時のブレアと同様、やる気満々だが、前イギリス陸軍トップ、前イギリス海軍トップの二人はアメリカ軍がシリア政府軍にミサイルを撃ち込むと「予想し得なかった結果」を招くことになると警告している。
また、イギリスの前駐イラク大使は軍事攻撃よりもロシア、中国にアサド政権に対し影響力を行使させるべきと主張。
前国防長官は「解決策を見つけなければならないが、それは軍事行動であってはならない」と述べている。

昨今、イラク戦争を「支持」した小泉元首相が「原発ゼロ」を打ち出したが、安倍首相はこのシリアへの軍事行動へ向かう動きに対し何か発言するのであろうか。