マン・オブ・スティール

これまでのスーパーマンは全部チャラ。
なかったことにしよう。
タイツに水泳パンツ、よれたTシャツにマントのスーパーマンも哀愁を誘って悪くはなかったんだけど、やっぱりなしにしよう。

しかし、こういうことだったのか、という事実が多いな、この映画は。
事実じゃないけど。

この映画では「俺はスーパーマンだ」という場面が一度もないどころじゃなくて、「スーパーマン」という言葉は一度しか出てこない。ネタバレになるかもしれないけど、胸のSの字はスーパーマンのイニシャルじゃないんだもん。Sだよなあ、と思うんだけど、違うって言うんだからしょうがない。
すべて一からやり直してくれてるんで、このスーパーマンでいきましょう。

なぜこんなにスーパーマンにこだわるか、いい歳してといぶかる方も多かろう。
理由はどんなことにもあるんだよ。
人間は因果律から抜けることはできないのよ。
中学生のときにバンドを組んでデビューを目指した話は自分でも飽きるくらいここで書いたが、私たちが悩み抜いてつけたバンド名が「クリプトン」だった。
みんなスーパーマンが大好き、というわけでもなかったんだけど、なんかスーパーマンがパワーが落ちたときにクリプトンから力を得るんだ、といううろ覚えどころか、真偽の明らかでない話を真に受けて「じゃ、もうクリプトンでえーやないか」と疲れ果てた末決まってしまった。
一応と辞書を引いてみたら、クリプトンは原子番号36の元素だということもわかったんだけど、なんだか面倒なことになるな、とスペルもビートルズに倣いKRYPTONからCRIPTONに変えた。
ロゴも作ったよ。
な〜んとも言えない気恥ずかしくなるようなロゴだけど、そのときは「えーやん、えーやん」と喜んだ私たち。

映画に戻るか。
相変わらずラッセル・クロウはすごい悪役、じゃなかった、スーパーマンの本当の父親だった。
惑星クリプトンが崩壊してしまって、残されたクリプトン星人は地球侵略しか頭にない悪いやつら。
スーパーマンもその一味、ではなくて地球に放たれた最後の善玉。

暗いよ。
スーパーマンは性格が暗い。
いじめられるちゃう。
だんだんアメリカンヒーローはバットマンもそうだけど、暗いやつらが増えてくる。
善悪二元論ではこの世界は割り切れないもん。
時代の要請だ。
このスーパーマンの戦いで罪のない人々が少なくとも20万人は死んだんじゃなかろうか。
911の後、あの映像はトラウマになるため放送を自粛するということになったが、私なんかこの映画見てもろにツインタワーの崩落を思い出しちゃった。
アメリカ人はもう立ち直ったからいくらでもビルなぎ倒していいよ、ということになったのかしら。

でも、スーパーマンが完全に自分が正しいと思っているバカじゃなくてよかった。
そう思い込んでいるやつらはパーのことが多いからな。
シリア戦争始めるぞと言い張るバカが散見されるが、そういうときにスーパーマンが出てきてくれると助かる。
「いや、はっきりしたことはまだわからない。俺が事実を明らかにしてくる」と数秒でシリアに飛んでくれて、本当に化学兵器を使用したのかを調べてくれたりして、こいつが使用しましたという人間を国際司法裁判所に連れて行き、正義を実行して欲しい。国際司法裁判所でいいのかな。
ちゃんとしたところ。ちゃんとしたところって今どこかにあるんだっけ。
悪いクリプトン星人と同じくらい地球人も悪かったりするかもしれんな。
少し考えさせて。

私はいまだにクリプトンのメンバーである。
正式に解散なんて声明出してないもん。
スーパーマン、私の期待を裏切らないで欲しい。
オバマがミサイルぶち込んだら、ミサイルとオバマを宇宙の果てに捨ててきて欲しい。
化学兵器を見つけたらそれも一緒にお願い。

スーパーマンが飛んだ後の空。
下関上空も飛んだものと思われる。