夏の終り

この間始まったばかりなのに、私の家の近くの映画館コンンプレックスでは今日から一日一回になってしまっている。
こういう地味目の映画はバカ当たりしなくてかまわないんだけど、それにしてもあんまりだ。

瀬戸内寂聴が晴美だった時代の小説で、設定自体は今でもそのあたりで起きているようなことなんだろうけど、そのしっとりした映像に体がなじんでしまい、当時の時代に生きている錯覚に陥る。

「どちらも選べない悩む恋多き女」的なことでこの映画を引っ張ろうとしていたが、間違い。
主人公の女性は「どうしたらいいの」と口走りながら、自分で生きていくことを既に承知している。
女性には本来バネがあるんですよ。
曲げて曲げて、ビヨーンと飛躍できるんだな。

小林薫綾野剛の配役は決まっているし、演技にも文句のつけようがないが、この映画はあらゆる意味で満島ひかりである。
満島ひかりに始まり満島ひかりで終わる。

泣きたい人には向いていないし、恋に燃え上がりたい人もつまらないかもしれない。
でも、映画好きにはたまらない。
満島ひかりが大声を上げて怒鳴っても、映画は淡々と静かに進行していく。
線香花火のような可憐で消えかかるような物語が浮かんでは沈んでいく。

ああ、あの暗闇で満島ひかりという光を見つめていた私は幸せだったな。

つまらないことなんだけど、先週までやっていた「Woman」でナマケモノさんとその継娘を演じていた二人が絡んでいることには違和感ありません。
でも、小林薫が現在63歳、私が56歳ということで、私が小林薫の役でもおかしくないじゃん、としょうもない希望を持ってしまった馬鹿野郎がこのブログを書いております。

夏も終りだ。
何か私にあったかしら。