ウォーム・ボディーズ(WARM BODIES)

ゾンビ、すごい人気じゃん。
ここまで人気が出てくるとゾンビになりたーい、って連中も多いんじゃないかな。
ずっと人気があるんだけど、2000年代に入ってからは凄まじい勢いで増殖している。
抜け落ちているものもかなりあるはずだけど、ウィキによれば世界で作られたゾンビ映画は2000年以降130本。
日本人にはなじみがないよな、と勝手に思い込んでいたんだけど、22本も作られている。
ゾンビ映画はもはやひとつのジャンルになっていて、ゾンビファンが「『ハリウッド人肉通り』(観てません)のゾンビはちょっとなー」とか「『ショーン・オブ・ザ・デッド』(観てません)には笑っちゃったよね」という会話がかわされているものと思われる。
勝手にやってて欲しい。

私はゾンビのことがさっぱりわかりせん。
だいたいゾンビってなんだよ。
生き返った死者?
踊るの?
手を前に突き出していたりするゾンビもいるけどあれはキョンシーのまね?
歩き方が不自由なのは部分的に腐敗しているからかしら。
でも「ワールド・ウォー Z」じゃ驚異的な勢いで走ってなかった?

ということでゾンビはその姿を自在に変えることが判明している。

元々はまた来た!ブードゥー教から来ているということになっていて、そのルーツはコンゴにまでさかのぼり、さらにゾンビを作るためのゾンビパウダーの起源はナイジェリアの少数民族にある、なんてことが書かれている。
おどろおどろしいものはみんなアフリカかい。
ま、実際には死者がそんなことで蘇ったりはしないんだけど、日本では小選挙区で落選して比例で蘇るゾンビ議員が厳然と存在しますね。こちらの方がよほど怖い。

そんなわけでゾンビ議員以外のゾンビには大変残念ながら対面することはかなわない。
だから、こんなにゾンビ映画が作られるわけであります。
杏さんは「早く人間になりたーい」とゾンビじゃなくて妖怪人間をやっていたが、ここで問題なのは、ゾンビは「人間になりたーい」と思っているかどうかだ。
ゾンビって人を食べるんでしょ。
じゃ、「人間になりたーい」とは思ってないよね。

ようやく本文に入るが、そういうことになっているにもかかわらず、「人間になりたーい」と思ってしまうゾンビの話が本日お勧めする「ウォーム・ボディーズ」である。
「キュートなゾンビ男子の恋に世界中が感染」だ。

ゾンビと人間が熾烈な戦いを繰り広げている近未来、食料調達にやってきた若者部隊はあっという間に殲滅させられる。
しかーし、可愛い女子の恋人を食っちゃったゾンビがその娘を見て、何かが自分の中で変化が起きていることに気づく。
さて、どうなるでしょう、じゃ、足を運ぶ気になれないかもしれないが、これが意外にも面白い。

売れっ子のニコラス・ホルト(「アバウト・ア・ボーイ」「シングルマン」「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」「ジャックと天空の巨人」等々)を主人公に持ってきて、食われちゃった恋人のことを顧みない可愛こちゃんはこれからの女優だけど、可愛いわ。
ジョン・マルコヴィッチまで出演してるし。

と、ポイントはそこではない。
私がこの映画の試写を観に行った理由は監督が「50/50」を撮ったジョナサン・レヴィンだったからだ。
この監督、ゾンビ映画を扱いにあたりすごく細かいところに注意を払っていて、それやるとまたああなるでしょ、と微妙なところを調整してきっちり本来の筋は「どうなの?」というところを見事にロマンティックコメディに変えてしまった。

試写が終わって、ほんわかしていたら、宣伝を担当している伊藤さんに捕まってしまった。
ゾンビ映画が面白かったって言いにくいなあ、とためらっていたんだけど、結局「すごくよかったんだけど、私、おかしい?」と語り始めてしまった。いろいろ監督のことなんかで言い訳していたんだけど、面白いものは面白い。
勇気だな。
ゾンビ映画が面白かったって言っちゃうのは勇気だ。

生者と死者を分つものはなんだろうか、とかいう映画じゃないんだけど、そんなことを考えながら観てくださってもかまいません。
「ゾンビはなあ」と二の足を踏んでいる皆さん、特に女子、騙されたと思って行ってみてよ。

ひとつ思ったんだけど、ゾンビが人を噛むとゾンビになるじゃないすか。
頭に来た人間がゾンビに噛み付いたらどうなるんだろう。
ゾンビが人間になったりはしないんだろうか。
壮絶な噛み合い映画ってのもあるような気がするんだけど。


昨日は中秋の名月だった。
あちこちでゾンビが人を食いまくってんだろうな、と感慨に耽ったが、あれは狼男だった。

私も撮影してみました。