キャプテン・フィリップス(CAPTAIN PHILIPS)

本日の「ごちそうさん」。
朝起きたら私がすごい小説家になっていますように。

本題。
良くも悪くもハリウッド映画には間違いないんだけど、いい出来です。
デブのトム・ハンクスもいいんだけど、この映画を成り立たせているのは海賊を演じている4人のソマリア人であります。
実にソマリア人らしい顔をしている。
一目見ただけで、「あ、ソマリア人だ」とわかる。
「知っているソマリア人いんのか」
「いません」
「なんでわかる」
「本を読んだからです」
「あの食ってる葉っぱは何だ」
「カートです」
「どうなるんだ」
「便秘になります」
「便秘になる為に食ってんのか」
「違います」
「じゃ、なんでだ」
「人恋しくなるためです」
「はあ?」
ともかくその本にソマリア人の写真がたくさん載ってるの。
それでわかるんです。

ストーリーは予告編でご覧になった通り。
特に付け加えることはありません。
ネタバレもさせていません、と申しますかネタバレのしようがない。

個人的に私がこの映画を強く押すのは、なぜソマリア人が海賊行為を行っているのか、について必ず知りたくなるだろうということからです。
「あー、ヒヤヒヤしたね」と恋人同士で語り合いたいなら、もっと他の映画観てよ。
「なぜだ?」がこの映画のテーマです。
ポンコツボートで近づいてきて、貨物船を少人数で乗っ取り、身代金を奪う。
本当にそんなことができんだろうか、と思うでしょ。
できんですよ。
それも「なぜだ?」のひとつなんだけど、なんでそんな海賊行為がやたらとソマリア沖で繰り返されるのか。
そこだ。
アフリカの人は野蛮だから、なんてことを言うバカはもう少なくなっただろうけど、「ソマリア人は傲慢で、いい加減で、約束を守らず、荒っぽい」という人もいる。ソマリア国境近くのエチオピア人ガイドがそう言っている。
マジですか。
エチオピア人とソマリア人は中が悪いんでそういう発言もあるだろう。

大倉、よくそんなことまで知ってるな、と感心した方がいるかもしれないので、本当はそのままにしておきたいんだけど、ごめんなさい。すべてパクリです。
これほど面白いノンフィクションを読んだことがない。
高野秀行さんの「謎の独立国家 ソマリランド」。

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

高野さんの本は全部面白いんだけど、この本はタイムリーであるとともに爆発的な衝撃度兼突拍子のなさを備えいる。
普通、あれだけ「危ない、危ない」と言われているソマリアに行くか?
考えたこともなかったけど、高野さんソマリアに行っちゃったよ。

ソマリアと一言に申しますが、現在どの国も認めていないんですが、ソマリアソマリアプントランドソマリランド、その他勝手に国と称している場所に別れております。
同じソマリア人ということになっているんだけど、それぞれが悪口を言い合っております。
一番治安に不安があるのがソマリア(南部)。海賊をどんどん出航させているのがプントランド。とんでもない内戦の末、現在は平和が保たれているソマリランド
高野さんはそのすべての「国」に行って取材を敢行しています。
私のような人間にはできない所業だわ。
でも、本を読むと必ず行きたくなります。
たまにそうでない人もいるかな。
行っても高野さんがほとんど書いちゃっているんで、本も出せないしね。

全部ここに書くわけにはいかないんだけど、キャプテン・フィリップスが遭遇したのはプントランドからの海賊と思われます。
どうして、海賊行為を行わなければならなくなったのか、答えは映画の中にも出てきます。
今では海賊行為は組織立っていてバックにはヨーロッパ、北米からの金が流れてきている、という説もあるけど、そこはよくわかりません。
ただ、プントランドは海賊行為で人の営みが保たれているというのは本当。

明日公開ですから、難しいかもしれないけど、本を読んでから行った方がバックグラウンドがよく理解できます。
映画観てからでもいいや。
とにかく課題図書として挙げておきますから、皆さん必ず読んでね。