クルージング

私ほどクルージングって言葉が似合わない男もいないんだけど、昨日それやっちゃったから照れる。
海はいいなあ。
心が開くよ。
あの空気を吸っているだけで50歳くらいに戻ったような気がする。

川なんだけどね。
深川富士見所有の北斎が我々が乗り込むボートだ。
粋な名前でしょ。
せっかくだから私の母に当たるところの不良老人も呼んでみた。
日本で一番大きくてお金がかかっている最新型。
屋形船っていうの?
屋形船生まれて初めてだよ。
深川芸者のお姉さんを呼んで「やっこさ〜んだよ〜、あ〜こりゃこりゃ」だ。
「となりにおいで、まあ、一杯」
なんちゃって。

ワクワクしてたんだけど、そんな人は誰もいなくて、総勢100人を超える豪華クルーズ。
ぎっしり詰め込まれた客は何が起きるのか目が輝いている。
目の前にはすでにでかい刺し盛り、寿司、なんやかんやがぎっしりテーブルに並べられている。
ビール飲もうじゃないの。
誰も動かない。

そこへ深みがありながらも軽快かつ滑舌のよい若い男性の響く声。
「皆様、本日はこの北斎へようこそおいでくださいました」
すごいな。
私よりJ−WAVEっぽいぞ。
淀みないテンポのいい流れだ。
もしかしてクリス?
と振り向くとマイクを握っているのはアレサ・フランクリンだった。

深川のアレサ、いい声してるぜ。

「お刺身、お寿司は暖房が入っていますから、痛みやすうございます。是非早めに召し上がりください。ある程度時間が過ぎると下げさせていただきます」
クワッ!いきなり寿司かい。
船が動き始めて乾杯したら、今度はジャンジャンバリバリ揚げたての天ぷらが運ばれてくる。
寿司、刺身をあわてて食っている時にそんなあなた。
「社長さん、一杯どうぞ」
てな展開とは真逆じゃん。

そこへ、右には東京タワー、左にはガスの科学館、正面にはなんとか橋、と次々に案内されるんだけど、船の中が明るいし、バトームーシュじゃないんで小さな窓からじゃ何が何だか。
優先順位は何だ。
とにかく出てくるものどんどん口に入れてたらお酒もいただけない慌ただしさ。
大食い大会かい。

と、気がつけばフジテレビ前で船は止まった。
そうだ、花火を見に来たんだった。
お台場レインボー花火。
11月下旬から12月末まで毎週土曜は夜7時から10分間だけ花火が上がるんだよ。
知ってたかい。

誰がやってるんだろうと調べたら主催は「お台場レインボー花火実行委員会」、なんだけど、参加企業が多すぎて基準がわからない。共催、協賛、後援、協力まで並んでいて正体不明。
昨日のFBでは何でも知っている構成作家まで「あれなに?」って聞いている。
俺に聞け。
よくわかんないんだよ。
こんだけ金かけてほとんどの人が知らないってなんか変なの。

しかし、屋形船大集合。
こりゃまるで香港の船上レストラン。

ゆりかもめは食い物を求めて船に近づいてくる。
どの船の客も食いきれないものを投げてやってるのよ。

花火。
私は人ごみが嫌いなんで夏の花火大会にはこの10年以上出かけたことがない。
花火は近くで見ないとつまんないでしょ。
つまり、カメラを持っていったものの、花火の撮り方がわからない。
その上、船は常時揺れている。
キャーどうなの、撮れてるの、タイミング合ってんの、ピントはどうすんのよ、と慌てている間に終わっちゃった。
ちゃんと花火見てたか?

帰りはお腹いっぱい、暖房効きすぎ、微妙な揺れが「なんとなく疲れちゃった」感を醸し出す。

杏さんと番組のスタッフで屋形船に乗ろうぜ、とうなづき合ってはや3年。
お先に失礼いたしました。