タコ野郎

ここんとこ頭に来ることが多くて、気がつくと「バカヤロウ」「ふざけんな」と怒鳴っている。
あれは人迷惑だ。
「いけませんねえ、あの法律は」「5000万円無利子無期限でお借りしたいですねえ」っていちいち言ってらんないから、ただの罵声になってしまう。
まずいな、ああいう野蛮な言葉を使うとびっくりされるんでどうしたもんかと考えていたら、ロンドンで仕事をしていたときに一緒に働いていたサマンサちゃんにためになる助言をしたことを思い出した。

毎年の大きなイベントで数ヶ月間も東京から毎日電話、ファックスで寄せられる「なんでこんなことまで」という質問に相手が相手なんで必ず返事をしなけりゃならない仕事がありました。
最初は私が質問を受け取ってサマンサちゃんに「これ確認して、ファックスでいいから返事しといて」と放り投げていたんだけど、ファックスで返事をしたあとにさらに細かい「1階から2階までの階段は何段?」とか、てめえふざけてんのかというやり取りになって、さすがにサマンサちゃんも堪忍袋の緒が切れて、電話を叩き切ったあとにやりきれない顔をして、「意味が分からない」「これを知ってどうしたい」「頭おかしい」とブツブツ言っておりました。
やった人間でないとわからないんですが、本当に脳の血管が切れるようなことを言ってくるクライアントっているんですよ。
どこだかは秘密です。

「こういうストレスの溜め方はよくないな」とサマンサちゃんの健康を案じて教えてあげた。
「サマンサ、あんまり頭に来ることがあったら、電話を叩き付けるのと同時に『タコ野郎』と怒鳴ってごらん。すっきりするよ。『このタコ野郎』『このタコ』でもいいよ」
「どういう意味なの」
「意味考えなくていいから『タコ野郎』って言ってみな」
ややこしい説明を省いて、日本語だけを教えた。
そしたら毎回東京と話したあとは「タコ野郎」「このタコ」と気分よく怒鳴っていた。
ロンドンで5つくらいやった人のためになることのひとつです。
サマンサ、まだ覚えてるかな。
「タコ野郎!」って怒鳴ってて欲しいな。

そんなことを思い出したもんだから、これからは「タコ野郎」で通そうかな、しかし、それで治まるような怒りかしら。

タコはかわいそうだな。
食べられるのは仕方ないとしても、バカにされる言葉になっている。
世の中のタコ差別は冷静になると許しがたいものがある。
「このタイ!」って通じないでしょ。
むしろ褒め言葉かと思っちゃうよ。

「好かんタコ」。京都では「好きではない人」のこと。
タコ部屋。
タコ配当。元本を食う配当。粉飾配当。
4タコ。4打席ヒットなし。
タコ殴り。袋叩き。
タコ入道。私のような髪型の人。
タコ社長。
ろくなもんじゃない。
自分で言い始めてなんだけど、蛸をバカにするなよ。
私は大好き。
だから私から「このタコ!」と呼ばれた政治家の皆さんは喜んでくださいね。

「土用の蛸は親にも食わすな」
これはいい意味。秋茄子を嫁に食わさないのと同じ。うますぎるんで人には食わさないということ。いいこと言う人もいるんだよ。

最近は答弁している人が茹ダコになってますね。

サマンサちゃん。何度目かのお披露目。