デモとスト

根が単純なんでゼネストと聞くと「よし!」とか拳を握ったものだが、日本じゃゼネストって行われたことないんだよね。
ゼネストって知ってる?
ゼネラル・ストライキ(General Strike)を短くしたやつね。
最近ではストライキ自体日本では聞くことがなくなりましたが、昔はよく鉄道が止まってしまって、お勤めの方は歩いて会社まで通っていらっしゃいました。
そんなに歩いたらクタクタでしょう、休めばえーやん、というのが私の主義でありましたが、お勤めすることになってからはそんなことはなくなってしまって、「何でスト止めたん」と意識の低さを自ら露呈しておりました。
今更ながら情けない。

学生の頃、学費値上げ闘争というのが私の大学でも一応ありまして、学生大会が開かれスト権が確立しましたが、私のときには結局ストライキにはならず、学内デモを決行ということになりました。
私もデモに参加しようと集合場所に行ってみると20人くらいがだらんと集っているだけ。
おや、これでデモかい。
行進じゃないの?
しかし、私にもプラカードが渡され「いくぞ!」ということになりました。
「おー」
みんな声が小さい。
「学費値上げハンターイ!」
「ハンターイ」
「物価スライド制を撤回せよー!」
「撤回せよー」
日吉の構内には学ランを来たあんちゃんたちが多くて、ギラギラした目でこちらを睨んでるんすよ。
声出ないよ。
やってみな。
体育会系の学生の多い一番大きな食堂に行ってシュプレキコールのようなものを何度か繰り返すんだけど、ヤジの方が声がでかい。
「帰れ!」
「バカ!」
「やめんかい!」
「よし、このくらいで勘弁してやるか」ということになり、そのまま解散。
あれはデモだったんだろうか。

私が2年のときには実際に日吉でストが行われ、学生がバリケード作ってました。
反帝学評が根城の場所だったんだけど、戦旗派中核派も応援に駆けつけてくれてました。
ストやると必ずやって来るんだけど、勝手にそれぞれがアジ演説をやっているだけで誰も聞いてない。
中核派のお姉さんにオルグ(入んなよ、と誘うこと)されましたけど、私は三田の学生だったもので「ふんふん」と話を聞いたふりしてささっと失礼しました。
学生運動を知らない世代なんです。

日本ではデモが盛り上がらない。
イラク戦争反対のデモに行ったときは3万人集まったんだけど、日比谷公園は満員電車状態で身動きが取れない。
そのまんま数時間待って、ようやく街頭に出たんだけど、規制が厳しくて一車線くらいで歩くんで迫力ないよ。
ロンドンでは100万人のデモだったんだけど、メインの大通りはすべて人で覆い尽くされて車はあきらめていただくしかない。友人もかなり参加していたようだけど、当たり前という様子でした。
警察の規制はどうなってんだろうか。

デモは民主主義国家できちんと認められた政治行動でございます。
これだけの人間があるイシューに反対を示す行動なんで、迫力がないと意味がないんだけどねえ。
黙って歩いても何のことだかわからないんで、そりゃシュプレキコールやりますよ。
マイクも使うよ。
それがテロと言われた日にゃ民主主義国家じゃないすわ。
少し古い話題で恐縮です。

タイで先月から大規模なデモが繰り返され収拾のめどが立たなくなっております。
インラック首相の退陣を求めたものになってしまっております。
タクシン元首相の恩赦を狙った法案が提出されたことがきっかけですが、これは否決されています。
インラック首相は辞任を拒否し、総選挙で信を問う、と回答していますが、反政府側はこれを拒否。
ここからが細かいことがなかなかわからなくなってくるんですが、反政府側はいきなり暫定政府「人民評議会」、選挙をしないで利益団体の代表からなる「人民議会」の設置を求めております。
どのように作るのかはわかりません。

こうなると少々混乱してきまして、反政府側のデモはすでにクーデターを無血で行えと主張しているような印象を受けますです。
わからんことにあまり口を突っ込むのは控えるべきなんだろうけど、このままだと「アラブの春」の二の舞になりませんでしょうか。今回は軍も総選挙を支持していますからそうはならないと思いたいんですが、民主的手続きを得ずに「革命」を起こしてしまうとその後、法律というものが機能しなくなって大変な混乱が起こることは目に見えています。
ちなみに「アラブの春」でみんなが幸せになった国はありません。
ずっと治安は悪化しています。
チュニジアが少しましなくらいか。
エジプトの現軍事政権はムバラク政権下の30年よりも多くの市民を逮捕拘束しています。

で、韓国では正確に言えば「ゼネスト」ではないんですが、28日に「ゼネスト」に突入しました。
鉄道民営化反対の鉄道労連のストが20日間に渡って長期化しているところに、そもそも朴大統領に腹が立つという他の労組、一般市民まで合流して、朴政権と完全に敵対しております。対話要求だったのが辞任要求までエスカレートしてしまって、こちらも行き先が見えなくなっております。
「朴大統領の日本バッシングは国内向けのアピールだった」とこちらでは言われておりましたが、そんな状況ではありません。

日本では「今年一年を振り返って」と悠長な番組ばっかり流れていますが、現在でも世界中で緊迫した状況は収束しておりません。

こんなことでよろしいでしょうか。

せっかくだから写真でも。
済州島はとても楽しいところでしたが、この騒ぎの中でも平穏でしょうか。