地元通信

昨夜、しみじみ飯を食っていたら、電話が。
年賀状でもない、SNSでもない、電話でご挨拶か、何でもいいんだけどさ、と電話に出ると。
「あんた誰かね」
「誰かねってあんた誰かね」
「ウヒャヒャヒャヒャ」
「どんだけ飲んだかね」
「わからん」
モトブーとはまともな会話にならない。
「あんたはなんで帰ってこんそかね」
「帰っても誰もおらん」
「ワシらがおるわーね」
「あんたらに会うために帰るんかね」
「ミキちゃんも待っちょる」
「あんたとは東京で会えばええやん」
電話の後ろの騒ぎは尋常ではない。
「ああ、ちょっと待っちょき」
「うえ〜、どうしちょるかね」
「あんたもう寝た方がええ」
「いや〜、これからやろ〜。これから来んかね」
「行かん」
「さみしいね〜、かみさんに替わるけ〜」
「大倉君、鉄の女やけど」
少しまともに話せる。
そうでもなかった。
「元気かね」
「遊びに来てーね」
「ミキちゃんと飲んじょるけど」
「いや〜、家にも来て〜ね」
「ミキちゃんが外で飲もうって」
「あの人そんなことを言いよるんかね」
「あ、そんな気がしただけ」
「いけん。よう言うとく」
この奥様はミキちゃんと本気で相撲をとっても負けないくらいの迫力がある。
電話は次々とまわされる。
「祐介です」
「元気にしてるかい」
祐介は東京の大学生。
私のうちの近くに住んでいる。
「はい。萌ちゃんは元気ですか」
「遊ぶ金欲しさにバイトしてるよ」
「あずさです」
「おお、あの野獣か」
「あの野獣って言いよるけど」
奥さんに確認中。
「あんた野獣やったわ〜ね」
奥さん確認終わり。
「人間に戻ったかね」
「はい。すっかり」
「真理です」
「人間らしい声やね」
「はい、ずっと人間です」
「可愛くなったかね」
「はい、でも少し太りました」
ミキちゃんの家族はミキちゃん以外図太い。
「ああ、オヤジが来た。チョッッと替わる」
「ばか、替わるな。なんで俺がお前のオヤジと話すんか」
「ああ、行った」
「洋子さんはおるんかね」
「ああ、洋子さん!洋子さん!イモが話したいって」
話したいと言ったわけじゃないんだけど。
嫌がって出てこない。
出た。
「あ、あの、明けましておめでとうございます。じゃ、ヒロクンに替わります」
ヒロクンはモトブー。
「あんたどんだけ嫌われとるかね。誰も長いこと話したがらんよ」
知らんわい。

その後も向こうの電話が宙を飛びかい、しばらくこの状態。

地元にかえろ〜、か。
元気でやってくれ。