サラダにツナ

ロンドン駐在中、毎週1回、2回マドリッドに通っていたことがあります。
おいしいものを食べに。
否、結果そうなっただけで、主目的は仕事です。
1年以上続いたこのマドリッドサーガについては関係者が全員亡くなってから書こうと思っているのですが、もしかしたらその頃には私も死んでいるかもしれません。
あんまり頭がグルグルすることばかりで、ロンドンに戻った翌朝マドリッドから電話かかかってきて「え〜〜〜!」ってことが起きて、そのまままたマドリッドに飛んで行ったこともあったな。
日帰りは疲れるんですよ。
くたくたよ。
いろんなことがロンドンと同じようにはいかないんだから。
そんなわけで、1泊、長くて3泊することが多かったですよ。

スペインの夕食の時間は遅いのね。
観光客向けの店は7時くらいからやってるところはあるけど、しっかりした店は9時からしか開きません。
9時に行ってもガラガラで10時くらいからパラパラと人が入ってくる。
そんな時間に1人で食事に行きたくないでしょ。
だから、スペイン人の同僚か日本人クライアントと一緒に行くです。
そうするとちゃんとしたレストランに行くです。
仕方ないでしょ。
そんなわけで、うまいものばっかり食べましたよ。
ああ、うまかった。
何でもうまい。
いい店を知っている方々が連れて行ってくれるんだから当然でしょ。
会社のお金を使わせていただいておりましたし。
クライアントが一緒だもん。

ある日、自動車メーカーの方がいつものようにおいしいバスク料理の店に連れて行ってくれたのね。
ハモン、チョリソとかつまみながらヘレス(シェリー酒)なんか飲んだりね。
そうしたところが、「野菜食べなきゃな」と小振りなレタスを頼んでくれました。
少し細長い感じのやつ。
これが大胆でね。
バスンと真ん中に包丁を入れただけ。
真っ二つ。
その間にツナ(生じゃなくてツナ缶みたいなツナ)が敷き詰めてある。
他はなんにもなくてオリーブオイルくらいかけたかな。
これがうまくてうまくて。
シャキシャキした歯触りのレタスにツナが凄くよく合う。
ああ、私は結局こういう食い物に戻って行くたぐいの人間なんだとしみじみ思いました。

それ以来、私は生野菜を食べるときには必ずツナ缶を開けて、身を野菜にのせて食べます。
ツナ缶は常備品です。
私しかそんなことやらないので、ひと缶は空かないでしょ。
それをサランラップかけて冷蔵庫に入れとくんです。

昨日も同じことをね、やりました。
残っていたツナ缶を冷蔵庫から出して。
野菜にドンジャカのせて、いきなりワシワシ食べ始めたところで、あー、なんだか不思議な匂いが。
不思議を通り越して生ゴミの匂いが。
と言うよりも腐ったものの匂いで私の口鼻目耳に腐臭が溢れ出した。

私は食中毒の王様と言っていいほど、学生時代から何度もひどい目にあっています。
お金がないから冷蔵庫の中のものはどんな状態でも食ってたからです。
3匹500円とかいうズワイガニ売りの軽トラックがマイク全開で「おいしいよ、大出血サービス」なんてのを聞くと必ず走って買いに出てたもん。
もったいないから一日一匹と決めるとね、3日目のカニにやられるんですよ。
3日間は動けなくなるくらい、凄いことになるんです。
何度も同じことをやるんで、さすがに私は自分を疑ったですよ。

ま、そんなわけで食中毒では死なないんじゃないかな。

しかし、昨日の私は違った。
腐臭を感じとるや否や、すぐに吐き出しました。
トイレに行く間もなく、あまりの匂いに皿に吐き出しましたよ。
喉を通過する寸前で気がついたから偉い。
自分を誉めてあげたいです。
しばらくの間、口をゆすいだね。
匂いって粘膜に張り付くんだということがわかりました。
しつこいしつこい。
完全に匂いを落とした後も頭の中の匂いの記憶は消えないものですよ。
キムチを食って、消しました。
一旦開けたツナ缶はできるだけ早めに食べること。
忠告はしたからな。

ツナ缶とレタス、是非お試しください。

写真は上で書いたものとは違うんだけど、スペインでサラダを頼むとまずツナが付いてくるという見本です。

その後のことを心配していただいた方へ。
今朝はちゃんと元気なのが出ましたからご安心ください。