アムOOOのささやき

最近、時間を1時間読み間違えることが多く、難儀しています。
8時に待ち合わせだったら自宅を6時半に出れば余裕を持って現場にたどり着ける、としますね、ところが私、なぜだかわからないんだけど、どこかで勝手に5時半に出なきゃ、と思い込んでしまうわけです。
で、永田町で乗り換えるあたりで、あれ、なんで俺こんなに早く今ここにいるんだろうと気がつくわけです。
そこで、あ〜あ、とがっかりしつつ、自分が心配になるんですが、まあ、早い分には怪我はない。
近くで一番安くアイスティーが飲める場所を探して、本を読みます。
昨日もそうでした。

ルノアールで本を読んでおりましたところ、そこに独特の雰囲気を醸し出すと言いますか、全面的積極的に振りまいている3人組が隣に座ったんでございます。
えっらそうにしている30代後半くらいの男性、そのパートナーらしき白人女性(日本語ペラペラ)、自信なさげに付いてきてしまった、という感じの若い女性。
何かが不穏かつ不思議。

偉そうな態度の男は従業員にも偉そうでね、なんか、召使いにあれこれ言っているって態度なのね。
「てめー」とか「ふざけんな」とか言ってるんじゃないんだけど、なんなんでしょうねえ、独特のやり込めるようなオーダーの仕方なんですわ。
こういう奴が苦手でね。
仕事だと絶対に相手にしないことにしております。

見てると不愉快になるし、あちら様も「なんじゃい」ということになりそうなので、じっと本を見つめる私。
見つめるんだけど、でかい声で男が話すもんだから嫌でも内容が全部聞こえてきちゃうのよ。
性でね、そうなると本はただの道具になってしまって、耳ダンボ状態。
なになになになに、そんなに大きな声なんだから、聞いてくれってことざんしょ、と思い込むわけですよ。

男は若い女性の前にどすんと座り込んで、説教を垂れ始めます。
そうなるんだろうな、と思ってたら、そうなりました。
仕事の心得についてこんこんと圧迫面接を始めます。

「誰かを説得するって時に、自分がやっていることに自信がなくて説得できると思ってんの?」
「あけみちゃん(仮名です)の今のようなやり方だと誰もついてこないよ」
「例えば自分が体験してないのに、ちょっと宇宙に行ってきて、って言える?相手が納得する?」
「例えばさ・・・」
「例えばさ・・・」
「例えばさ・・・」
一体何がたとえなのかさっぱりわからない話を延々繰り広げる男。
時々私にはほとんど聞こえない小さな声で返事をする若い女性。
黙って携帯をいじっている白人女性。
なんなんだか早く教えてくれや。
「大変申し訳ありませんが、同席させていただけますでしょうか」
ってくらいのことができたら、私も一皮剥けるような気がするんだけど、それができない。

「アムOOOはさ」
といきなり答えが出てきた。
お〜お〜お〜お〜、それだったか。
ようやく納得したぜ。
あれか、あれだな。
ネットワーク商法と言えば聞こえはいいけど、マルチ商法で大変名を馳せているやつじゃん。
ピラッミッドの頂点に立つと会報で神様みたいに称賛を浴びるやつよ。
濡れ手に粟の大儲け、ってやつだ。
そうか、こんな喫茶店でガンガン責めるんだ。
丸聞こえですが、よろしゅうございますでしょうか?
必殺の極意伝授の会なの?
でも、お話は全然説得力ございませんことよ。
と、はたで聞いている私にはそう思えるんだけど、1時間以上にわたり責め立てられているか弱く見える若い女性はうなづいているからわかってんのかしら。
早い話、もっと気合い入れて会員集めんかい、ということなんでしょ。

何の話だかわかんなかったときには、いい加減うんざりして、白馬の王子様になって、「さ、ここ出よう」と女の子を連れ出しちゃおうかしら、と計画を練ってたんだけど、やんなくてよかったわ。
アムOOOさんよ、犯罪じゃないことくらいわかっておりますが、結構ギリギリのところでご商売なさっていらっしゃるんだから、もう少し場所等はお考えになった方がよろしいんじゃございませんか。
聞いてる方が気分悪いんだよ。
それから、若いお嬢さん、さっさと縁切って、地に足つけたお仕事をなさった方がいいんじゃないかとオジサンは思いますよ。
あんなバカ男の正体に気づかない、ってのはこれから大変だよ。

勉強になったけど、極めて不愉快な1時間でござった。
先に出たけど、あれからもずっと続いてたんだろうか。
もうちょっと聞いていたかった気もいたします。

似たようなのでピラミッドスキームというのもあります。
こちらは商品が一切登場しない完全なインチキ商売でアメリカでは違法となっています。
イギリスである女性(イギリス人)がピラミッドスキームを立ち上げようとしているのを察知してなんとかやめさせようとしたことがあったんですが、「騙される方が悪い」と開き直られて、途方に暮れたことがございました。
どうなっちゃったかしら。

嫌な話のあとは市場の写真がいいわ。
プノンペンカンボジア